研究課題/領域番号 |
20K12567
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
前田 亮 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (20351322)
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研究分担者 |
バトジャルガル ビルゲサイハン 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (30725396)
SONG Yuting 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (50849388)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多言語処理 / レコード同定 / 情報推薦 / 文字認識 / メタデータ |
研究実績の概要 |
本年度は,日本文化に関わる各種資料のディジタルアーカイブ(以下DA)への統合的な多言語情報アクセス環境を実現する技術の開発に向けて,日本文化DAに対するバイリンガル検索技術 ,日本文化DAの言語横断レコード同定技術,日本文化DAに対する情報推薦技術,蔵書印および落款印に基づく近世・近代文化人ネットワークの分析の各技術について研究を行った. 日本文化DAに対するバイリンガル検索および言語横断レコード同定技術に関しては,これまでに研究を進めてきた,言語横断型の単語分散表現を用いて機械翻訳に依存せずに異言語の浮世絵DAから同一作品を同定する手法について,新たにオランダ語のメタデータを対象とした実験を行った.また,浮世絵のメタデータについて,インターネット上で無料で使用可能な複数の機械翻訳サービスによる翻訳の品質について検討を行った.さらに,言語横断型の単語分散表現に関して,日本語特有の情報を用いることで精度を向上する手法を開発した.本手法に関して,International Journal of Asian Language Processingに論文の掲載が決定した. 日本文化DAに対する情報推薦技術に関しては,浮世絵DAを対象としたアクセスログからのリンク予測に基づくグラフベースの情報推薦システムを構築した.また,従来のアクセスログおよびメタデータに加え,画像特徴を用いた情報推薦システムを構築し,実稼働している浮世絵DAに実装した. 蔵書印および落款印に基づく近世・近代文化人ネットワークの分析技術に関しては,浮世絵画像にしばしば捺される落款印および古典籍に捺される蔵書印に対して文字認識を行い,これらの情報から得られる資料間に存在する潜在的な関係や資料作者および資料収集者間の人的関係を明らかにし,近世・近代における日本の文化人ネットワークの分析を行う技術を開発した.本手法に関して,Journal of Data Mining and Digital Humanitiesに論文が掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標である,日本文化に関わる各種資料のディジタルアーカイブ(以下DA)への統合的な多言語情報アクセス環境の実現する技術の開発に向けて,ほぼ計画通りに研究を進めることができた.特に,日本文化DAに対するバイリンガル検索および言語横断レコード同定技術に関して,浮世絵を対象として日英に加え新たに日本語とオランダ語間を対象とした実験を行い,日英言語間と同等の精度で言語横断レコード同定が可能であることを実証できた.また,日本文化DAに対する情報推薦技術に関しては,画像特徴を用いた情報推薦システムを実稼働している浮世絵DAに実装することができた.これにより,情報推薦の精度向上に有用なアクセスログデータの取得が期待できる.蔵書印および落款印に基づく近世・近代文化人ネットワークの分析技術に関しては,落款印や蔵書印の情報を基に,浮世絵や古典籍の資料間に存在する潜在的な関係や資料作者および資料収集者間の人的関係を分析する新たな手法を提案することができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,日本文化DAに対するバイリンガル検索および言語横断レコード同定技術,日本文化DAに対する情報推薦技術,蔵書印および落款印に基づく近世・近代文化人ネットワークの分析技術の各技術について,以下の検討を行う. 日本文化DAに対するバイリンガル検索および言語横断レコード同定技術に関しては,これまで提案してきた各種手法の実稼働システムへの実装を目標として研究を進める. 日本文化DAに対する情報推薦技術に関しては,従来から研究を進めているエネルギーベースの機械学習推薦モデルについて新たな実験を行い,これまでの研究成果をまとめて学術論文誌に投稿する.また,グラフベースの深層学習推薦モデルについては,マルチモーダル知識グラフを用いた類似アイテム予測に基づく推薦モデルについて検討を進める. 蔵書印および落款印に基づく近世・近代文化人ネットワークの分析技術に関しては,マルチモーダル表現学習に基づくクロスモーダル多言語横断検索の実現に向けて,複数データソースによるクロスドメイン検索技術について検討を進める. また,本研究の成果は,複数の国内会議および国際会議において発表を行う予定である.また,研究成果をまとめた論文を学術論文誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 物品費については,各提案手法について検討の結果,当初購入を予定していた設備ではなく既存の設備で研究を進めることが可能となったため,また,旅費については,当初は国内外での学会発表のための旅費・参加費に使用する予定であったが,コロナ禍によりほとんどの学会がオンライン開催および参加費無料となったことから,経費を使用する必要がなくなったため. (使用計画) 次年度使用額は,主にリサーチアシスタントを雇用するための資金および研究補助のアルバイト謝金に充てる計画である.
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