研究課題/領域番号 |
20K12584
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
酒井 麻衣 近畿大学, 農学部, 講師 (40512299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イルカ / ハクジラ / 鯨類 / 子育て / 社会行動 |
研究実績の概要 |
ハンドウイルカ属は、母親に大きく依存する期間(コドモ期)が出生から3年間以上あり、かなり長い。本研究は「母親や他個体との相互作用・社会関係が、独立した後の社会関係の基盤となり、母親から受けた養育行動が自らが産んだ子への適切な養育行動につながることが、長いコドモ期の適応的意義である。」との仮説を検証する。そのため、25年にわたる個体識別情報のある伊豆諸島御蔵島のミナミハンドウイルカを主な対象とする。まず母子の相互作用を記載する。次に、オスのコドモ期の社会経験は、独立後の社会関係に影響するかを検討する。また、メスのコドモが母から受けた養育行動の特徴が、母から娘へ受け継がれるかを検証する。そして、繁殖成功した個体とそうでない個体のコドモ期を比較し、コドモ期の社会経験の適応的意義を明らかにする。 R3年度は、母子間の相互作用の機能を明らかにするため、胸ビレで相手をこする行動であるラビングに着目し、量的データを取得可能な飼育ハンドウイルカを対象に分析を行った。その結果、ラビングには体表面の古い皮膚を落とす機能があること、母が子をこすることが多く、この行動が母による世話の一つであることが明らかとなった。また、御蔵島のミナミハンドウイルカの母親と息子の社会的性行動の記載を行った。さらに、本個体群の個体の腹部に現れる斑点模様の記載を行い、斑点は約6.5歳で現れ始め、生涯増え続けることを明らかにした。この知見は、年齢不明個体の年齢の推定に斑点の情報が有用であることを示す。また、コドモの排糞行動の分析を行い、0歳児の排糞秒数が短いことがわかった。このことから、1歳児以降と授乳や採餌頻度・餌が異なる可能性が考えられた。母子の遊泳サポートの分析を行い、子が母の斜め上に位置する時の方が、子が母の腹の下に位置する時よりも、遊泳サポートの効果が大きいことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、母子間の社会行動について分析を進めているが、水中ビデオ映像の分析に多くの時間が必要となり、進行がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
水中ビデオ映像の分析については、新たにハクジラ類の社会行動の分析経験を持つ者を雇用することを検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、国際学会が2021年から2022年に延期になった。そのため、2021年は国外旅費を使用しなかった。2022年度に使用する予定である。
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