研究課題/領域番号 |
20K12586
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 佳代 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (90462697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | aromatase / エストロジェン / ラット / マカクサル / PET |
研究実績の概要 |
信頼・愛着・コミュニケーションなどに関わることが報告されているオキシトシンは、それらの社会行動における脳内メカニズムはいまだ不明な点が多い。生体内のオキシトシン系メカニズムを分子イメージングの手法で明らかにすることを目的として、関連する分子を定量的にイメージングできるPETプローブを開発している。本年度は、オキシトシン系を一部制御するエストロジェンを合成する酵素aromataseをイメージングするための新規PETプローブの合成、開発、評価を行った。 我々はこれまでにリード化合物として[11C]cetrozoleの開発に成功しており、今回は11C標識の化合物として、[11C]cetrozoleの類縁体である[11C]iso-cetrozole, [11C]nitro-cetrozole, [11C]meta-cetrozoleの評価及び、[18F]iso-cetrozoleの開発・合成法の確立・評価を行った。11C標識の類縁体については、[11C]iso-cetrozoleがマカクサルにおいてaromataseに対して[11C]cetrozoleより高い結合能を示した。またヒト臨床試験でも評価を行い、[11C]cetrozoleと同等に優良なPETプローブであることが示された。 [18F]iso-cetrozoleについては、ラット脳を用いたin vitro/ex vivo autoradiographyおよびマカクサルのPETイメージングにより、脳内aromataseの局在をよく反映していることが示された。またラットの扁桃体組織を用いたbinding assayにより、[18F]iso-cetrozoleは脳内aromataseに対して[11C]cetrozoleと同等の親和性をもつことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オキシトシン受容体をイメージングするPETプローブの開発については、現在のところ特異性の高い化合物を発見するに至らずやや難航している。しかし、関連する分子としてaromataseをイメージングするためのPETプローブの開発が進んでいる。半減期の長い[18F]で標識する化合物は様々なところから需要があり、今後、他研究施設とも協力して研究をさらに発展させることができる。 しかしながら2020-2021年度のコロナ禍による大きな停滞により、当初予定していたヒトの臨床試験の実施は難しくなってきている。
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今後の研究の推進方策 |
aromataseに対する新規PETプローブの評価を済ませて論文化する。[18F]iso-cetrozoleのみならず、もう一化合物開発・評価を行う可能性がある。 オキシトシン受容体のイメージング用PETプローブについては、現況のデータで論文化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度のコロナ禍により大きく繰り越したため、その余剰分がまだ残っている。新規PETプローブの開発が複数にわたっているため、その評価を行うために使用する。
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