研究課題/領域番号 |
20K12848
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
山田 小夜歌 日本女子大学, 家政学部, 助教 (40825204)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミュージックホール / ヴァラエティ劇場 / ロンドン / イタリア / 劇場文化 |
研究実績の概要 |
本研究は19-20世紀転換期西欧における歌劇場などの「大劇場」とヴァラエティなど「大衆向けの劇場」双方のバレエについて、上演実態や受容を明らかにし双方の影響関係を検証することで、当時の多様なバレエ上演のあり方を捉えようとするものである。 2021年度は昨年に続きコロナ禍で資料収集のための海外渡航が制限されたことから、すでに手元にある英国ヴァラエティ劇場(ミュージックホール)のバレエに関する資料の整理と読解に専念した。英国では1860年代~1900年代にかけてヴァラエティ劇場がバレエ上演の中心となったが、作品の主題やスタイル、趣向は極めて多様で、個別の上演事例を丹念に調査する必要がある。本年度は上演芸術とメディアをテーマとする所属研究所主催国際シンポジウムへの登壇を予定していたため、英国にとって王朝転換期でもあった世紀転換期における政治的・外交的・社会的変容と、表現メディアとしてのバレエとの関わりに注目し、作品分析とその受容について考察を行った。シンポジウムはコロナ禍により中止となってしまったが、成果は論文としてまとめ、研究所の機関誌に掲載された。本研究の主旨からすると同論文はやや周縁的な主題にもみえるが、論文執筆の過程で、「大衆向けの劇場」とそこでのパフォーマンスが、社会や市民生活の変化に呼応するように変容を遂げていく様を具体的に確認できたことは本研究を進めるうえでも有益であった。また、この「大衆向けの劇場」には「英国らしさ」という民族意識が通底しているが、同劇場でバレエ上演を担った舞踊家の多くがイタリア人などの外国人であったことにも注目する必要がある。これには同時期イタリアの劇場文化をめぐる環境や、欧州の「大劇場」におけるバレエ上演状況とも深いかかわりがある。これらの事情については、引き続き英国とイタリアを中心に上演事例を集めて詳細に分析する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、昨年度から二年間に渡って国内外での一次資料調査が制限されたこと、また社会的要請を受けて昨年以上に教育活動に時間を充てたことにより、研究は当初の予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
イタリア関係の資料はオンラインではアクセスできないものが多数あるため、渡航が可能になった時点で現地調査を行う。他方、英国関係の資料は過去2年間である程度遠隔で調査が進んだ。当面はこれらの資料の整理と読み込みを行い、ヴァラエティ劇場のバレエ上演と作品の事例分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定であった史資料調査のための施設訪問が不可能となったため、旅費と人件費・謝金(外国語史料翻訳)が未使用となった。この分は、次年度状況が許せば海外調査実施のための旅費として、また海外からの資料取り寄せ・複写費用、資料の翻訳費用等に使用する予定である。また申請者の所属機関異動に伴い、次年度は国内資料調査にあたり東京出張(早稲田大学演劇博物館ほか)が必要となるため、その旅費に充当する。
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