研究課題/領域番号 |
20K13022
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鋤田 智彦 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60816031)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音韻逢源 / 満文水滸伝 / 満漢資料 / 言語接触 / 近世語音 |
研究実績の概要 |
当該年度は19世紀中頃に刊行された字音書『音韻逢源』に見られる満洲文字により記された漢字音についての分析、検討を行った。鋤田智彦(2022a「『音韻逢源』の漢字音」、『アルテス・リベラレス』110:pp.47-79)では『音韻逢源』に見られる声母・韻母・声調体系についてまとめ、あわせて本書に収録された漢字を表にまとめた。表にまとめた際は一つの字が複数の字音を持つ場合、それぞれを対照しやすいように加えた。そこからは18世紀中頃の漢字音に対する認識を知ることができる。『音韻逢源』は保守的な性格を持つと同時に、入声由来字には北京語音に基づく白話音を多く収めるなど、実際の字音が変化している様子を捕らえている資料だと位置づけることができる。また、当該年度は満洲語訳された小説類として新たに『満文水滸伝』についての研究を進めた。大阪大学が所蔵する抄本『満文水滸伝』について成立時期やその背景をまとめたものが鋤田智彦(2022b「大阪大学蔵『満文水滸伝』について」、『中国文学研究』48、pp. 1-23)であり、第3回から第100回の回目をまとめたものが鋤田智彦(2022c「大阪大学所蔵『満文水滸伝』回目」、『アルテス・リベラレス』111、pp. 77-94)である。これまで『満文水滸伝』についてはフランス国立図書館蔵のものが知られていたが、今回改めて大阪大学蔵本について詳細に分析した結果、フランス蔵本とは異なる版本であること、大阪大学蔵本が抄写されるに至る間に明確な語彙、綴りの改編があったことが明らかになった。このような事実は満洲資料そのものを扱う際の難しさを示している。一方で同時代的な満洲語、あるいは漢字音表記を反映するものであるということも浮き彫りとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍は継続して先が見えず、実際に資料の閲覧のために所蔵機関に赴くことが出来なかったが、そのような中で各地の資料収蔵機関がオンライン上で公開している資料に注目したり、収蔵機関より資料を取り寄せそれらを活用し研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は『音韻逢源』に収録された漢字の満洲字表記について、表にまとめることができた。この際明らかになった個別の字についての歴史的、通時的な状況については、これまで取り扱った資料『清書対音協字』や次年度以降に取りかかる資料においても関連するものである。『音韻逢源』に見える漢字音は『清書対音協字』と共通点は多いものの、詳細に見比べると相違点も決して少なくない。また、来年度については小説である『満文水滸伝』問うに見られる漢字音についても分析を進めるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き今年度もコロナ禍のため出張に行くことができず、旅費として使用する分が使われないままである。今後は資料の適切な入手、謝金を必要とする作業、また、資料蔵書機関などに資料の複写を依頼することも多くなると考えられる。
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