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2023 年度 実施状況報告書

独立語文と述語文の連続性に関する文法・談話・韻律の多角的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K13046
研究機関青山学院大学

研究代表者

大江 元貴  青山学院大学, 文学部, 准教授 (30733620)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード談話文 / 脱談話文 / 終助詞 / 感動詞 / 談話ジャンル / パラ言語 / 非言語 / 役割語
研究実績の概要

前年度までの研究の蓄積により、「独立語文/述語文」という対立で論じられてきた文類型の特徴は、談話依存性(文と談話との結びつきの強さ)というより大きな視点から捉え直されるという示唆を得ていた。本年度はこの文論に関する新たな枠組みの粗描を論文にまとめ刊行することができた(「文を多面的・多層的に捉える:話し言葉の文法研究にとっての「文」の可能性」『日本語音声コミュニケーション研究』12)。具体的には、これまで「文」と呼ばれてきたまとまりには少なくとも、「談話文:具体的な談話場においてはじめて成立する、構造と言語行動の統一体としての文」と「脱談話文:具体的な談話場を捨象した、構造と意味の統一体としての文」という2つのレベルがあり、独立語文は談話文としてのみ捉えられる文として位置づけられることを明らかにした。
さらに、分析の視点を拡張したことにより、独立語文をめぐる言語現象を伝統的な文成立論に関わる問題に留めずに、さらに大きな問題系に接続させる2つの方向を見出すことができた。1つは、パラ言語・非言語研究との接続である。終助詞・感動詞などの言語形式と、韻律などのパラ言語や表情・ジェスチャーなどの非言語は、談話文のレベルでは同種の働きをする要素とみなすことができる。この接点は「文の身体性」という問題系に切り込む足がかりとなる。もう1つは、役割語・キャラ研究との接続である。ある言語表現が特定の談話ジャンルと強く結びついているという現象は、ある言語表現が特定の人物像・キャラクタと強く結びついているという現象と平行的に考えることができる。この接点は「文の社会性」という問題系につながる。この2つの論点については、それぞれ準備的考察を2つの講演会・研究会(岡山大学文学部日本語学講演会、「テキストの中の文法」第5回研究発表会)で報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

文論の新たな枠組みに関する論文を刊行できた点や、研究当初には想定していなかった文の身体性・社会性という論点が見出された点は大きな進展であるが、個々の構文の分析が遅れており、研究の総括には至らず1年研究繰越をして対応することになったため、「やや遅れている」とした。

今後の研究の推進方策

2024年度が最終年度となるため、左方転位構文や終助詞文などの個別の構文の記述をまとめた上で、理論的考察を含めた総括を行う。個別の構文の記述的成果は学会誌の論文として投稿する。理論的考察については他の成果とあわせて2025年度以降に単著として成果公開ができるよう準備を進める。

次年度使用額が生じた理由

研究代表者の所属機関の変更等の事情で参加を予定していた複数の学会への参加が叶わず「旅費」が使用できなかったことと、当初は独立語文に対する韻律の影響をアンケート調査によって検討する予定であった現象の一部をコーパスの実例分析に切り替えたため、「人件費・謝金」を使用しなかったことが主な理由である。
次年度使用額分は、英語依頼論文の英文校正に係る人件費・謝金と研究打ち合わせのための旅費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 「文」を多面的・多層的に捉える―話し言葉の文法研究にとっての「文」の可能性―2024

    • 著者名/発表者名
      大江元貴
    • 雑誌名

      日本語音声コミュニケーション

      巻: 12 ページ: 1-19

  • [学会発表] 行動としての「文」、行動様式としての「文法」2023

    • 著者名/発表者名
      大江元貴
    • 学会等名
      岡山大学文学部日本語学講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] ジャンルに着目した文法研究は言語の何を明らかにする試みか2023

    • 著者名/発表者名
      大江元貴
    • 学会等名
      「テキストの中の文法」第5回研究発表会
    • 招待講演
  • [図書] 日本語の大疑問22024

    • 著者名/発表者名
      国立国語研究所編
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      幻冬舎
    • ISBN
      9784344987180
  • [備考] 「旨い旨い」「偉い偉い」と同じ言葉を繰り返す言い方に、法則性はあるのでしょうか(ことば研究館)

    • URL

      https://kotobaken.jp/qa/yokuaru/qa-212/

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公開日: 2024-12-25  

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