研究課題/領域番号 |
20K13090
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三谷 彩華 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 助手 (20831960)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 要旨 / 要約 / 文章構造 / クラスター分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、人文学分野の研究論文の要旨作成方法を提案することを目的としている。2020年度は、日本語の人文学の研究論文の要旨の表現類型を明らかにする(研究課題1)ため、日本語教育学と日本語学の学会誌に掲載された研究論文各50編、計100編の要旨と本文を対象に、①要旨の文章構造分析、②要旨における本文の言語要素の使用傾向の分析を3名の分析者で行い、①については、要旨に書かれる各構成要素の言語量を変数にクラスター分析を行った。その結果、日本語教育学の要旨は、「a.概要提示型」「b.背景・目的詳述型」「c.結論詳述型」の3種に分類され、日本語学の要旨は「a.概要提示型」「b.背景・目的詳述型」「c.結論詳述型」「d.方法詳述型」の4種に分類されることが明らかになった。 また、大学院生がどのように要旨を作成するのかを明らかにする(研究課題2)ため、大学院生10名に対して行った要旨作成調査で収集した半構造化インタビューデータの定性的コーディング作業を2名の分析者で行った。その結果、コードは14カテゴリーに分類され、中でも「4.作成上のストラテジー」「9.要旨の構成要素」「8.本文の参考箇所」のコードが多く出現したことが明らかになった。10名の大学院生が作成した要旨は、研究課題1と同様の方法を用いて、2名で分析を行った。その結果、論文要旨に書かれる構成要素や構成要素が要旨に占める分量といった点で、大学院生の要旨作成上の課題がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の研究の進捗状況について、以下、研究課題ごとに記述する。 研究課題1では、日本語の人文学の研究論文の要旨の表現類型を明らかにするため、日本語教育学と日本語学の学会誌に掲載された研究論文各50編、計100編の要旨と本文を対象に、①要旨の文章構造分析、②要旨における本文の言語要素の使用傾向の分析を3名の分析者で行い、数値データをまとめ、学会誌掲載の研究論文の要旨の表現特性を明らかにした。 研究課題2では、大学院生がどのように要旨を作成するのかを明らかにするため、大学院生10名に対して行った要旨作成調査後の半構造化インタビューデータの定性的コーディング作業を2名の分析者で行い、コーディング結果を統計分析にかけた。また、大学院生が作成した要旨は、研究課題1と同様の方法を用いて、2名で分析を行った。そして、以上の分析を総合して、大学院生による要旨作成上の課題を考察した。 研究課題3(大学院生と教員が考える「適切な要旨」とはどのようなものかを明らかにする)については、教員と大学院生による要旨の表現類型別評価調査をオンラインで行うための準備として、調査で用いる要旨の選定、評価方法の検討等、調査内容の再検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、研究課題2(大学院生がどのように要旨を作成するのかを明らかにする)の追加調査と研究課題3(大学院生と教員が考える「適切な要旨」とはどのようなものかを明らかにする)の調査を2020年度に立て直した調査計画をもとに行う。具体的には、6月に倫理審査を出し、審査に通り次第、調査を開始する予定である。調査後の分析は、昨年度同様、客観性を保つために複数名に依頼して行い、結果のまとめまで進めるよう努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響で、学会出張費を一切使わなかったことが理由としてあげられる。また、調査も当初対面で行う予定でいたため、オンライン等への切り替えの検討や切り替えに伴う調査内容の修正に時間がかかり、調査実施まで至ることができなかった。 今後は、コロナウイルス感染拡大に伴う調査内容の変更についての検討を2020年度に行ったため、2021年度に調査を行い、調査のオンライン化で必要となるウェブカメラ等の物品費及び調査謝金として使用する。また、調査後のデータ整理や分析の人件費として使用する予定である。
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