知的営為における女性の活動と評価に関し、女性が何を書き、自らの著作活動をどう正当化したのかという観点から「書く」という行為の意義を考察した。13世紀後半の宗教文学テクストを主要史料とし、高度な教育を受けラテン語で執筆する女性が複数存在したドイツのヘルフタ修道院とその周辺地域を検討対象とした。13世紀末は神秘主義への転換と信仰の内面化が特徴であり、幻視録はその典型とされる。しかし、本研究は世俗社会への言及に着目することで死後救済と寄進を関連づける伝統的修道制の影響と、テクスト作成が女性の宗教的劣位を補填する役割を持った可能性を明らかにし、宗教運動の研究に新たな視点を提供した。
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