研究課題
若手研究
遺跡から出土する脆弱な木製遺物の保存処理には、安定化のための薬剤含浸に長い期間を要することから、その効率化が長年の課題とされてきた。本研究では、遺物表面からの溶媒蒸発を利用して木材内に溶液の流れを生じさせ、移流によって遺物内部に溶質を能動的に移動させる新たな薬剤含浸法について、実験によりその実用性を示した。従来の薬剤含浸法に比べ、出土木製遺物の保存処理の効率を大きく向上させる一助となるものといえる。一方で、適切な処理条件の策定法については、今後さらなる検討が必要である。
文化財保存科学
本研究では、出土木製遺物の保存処理における薬剤含浸について、その効率を従来法に比べて大きく向上させる新たな手法とその実用性を示したものである。木製遺物の保存処理効率の向上は、未処理のまま水中で仮保管される期間の短縮にも寄与する。すなわち本研究の成果は、より多くの木製遺物を、より良好な状態で後世に残し伝えることにつながるものであるといえる。また、実務上の作業負担が大きく軽減されるとともに、使用薬剤量やエネルギーの削減も可能であることから、人的・経済的なコストの大幅な低減につながるものである。