研究実績の概要 |
本研究の目的は、ガンジス川など自然の存在物に法的な人格を認める、現代インドの一連の裁判と関連する国家プロジェクトへの法人類学的な調査を通じて、 自然環境と社会の法がいかに相互構成しているのかを明らかにすることである。 今年度は奄美大島において自然の権利訴訟をめぐる裁判(アマミノクロウサギ訴訟)について原告団や弁護士の方々にインタビューを行うと同時に、現在進行中の嘉徳浜の護岸工事をめぐる訴訟と自然の権利訴訟の関係について、現地で参与観察調査を行った。その結果、自然の時間、法の時間、インフラの時間という複数の「時間」の翻訳という、自然の法則と人間の法の関係を考える上で重要な理論的視点を得ることができた。 さらにこれまでの数年間の理論的・経験的研究をもとに、East Asian Science, Technology, and Society: An International Journalに論文を掲載したほか、Routledgeから共著でLife, Illness, and Death in Contemporary South Asia: Living through the Age of Hope and Precariousnessを出版した。また日本法社会学会、創生法学研究会、「自然の権利の理論と制度」研究会などで発表を行い、法学と文化人類学の対話について問題提起を行った。
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