研究課題/領域番号 |
20K13295
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古川 不可知 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (00822644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 車道建設 / ヒマラヤ / ネパール / インフラストラクチャー / 山岳観光 / モビリティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ネパールの山間部における車道建設とそれが沿道地域に及ぼす影響を観察し、人々の移動実践の変化を明らかにすることである。初年度となる2020年は、新型コロナウイルスの影響により予定していた二度の現地調査を実施できず、国内での文献調査と理論的枠組みのブラシュアップが主たる活動となった。具体的には、ネパール各地の民族誌を道路との関わりに着目して読み直す作業をおこなった。また移動とインフラストラクチャーおよび歩くことに関する議論をレビューしつつ、モビリティ概念に内在するある種の西洋中心性を批判的に検討した。それらの成果は、論文「天候のなかに線を描く ――ティム・インゴルドの歩行論をめぐって」『たぐい』(亜紀書房)、「シェルパの変容――ヒマラヤ観光を生きる人々」『現代ネパールを知るための60章』(明石書店)、ほか一般向けの講演も含めた5回の口頭発表などとして公表されている。また2021年3月にクロアチア(オンライン)で開催されたIUAES 2020では、Mobilities and Materialitiesと題したパネルを代表者として組織し、海外の研究者と意見交換をおこなった。 他方で本年度は新型コロナウイルスの影響が継続する可能性を踏まえ、代替的なフィールドワークとして福岡県の登山観光の研究にも着手している。登山客たちの活動へと参与観察したほか、観光政策や入込客数などをめぐる基礎資料を確認し、インフラ整備と景観の変化などについて予備的な調査をおこなった。以上から、山間部の実践をめぐるネパールと日本の比較研究にも一定の道筋をつけられたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度は予定されていた現地調査を実施することができず、議論に不可欠なデータを収集することができなかった。文献調査は一定の成果を収めたものの、研究全体としては遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では新型コロナウイルスが収束次第ネパールでの現地調査を再開し、初年度の遅れを取り戻す方針である。ただしネパールでの調査が実施できない場合には、ネパールの車道建設に関する手持ちのデータと日本国内の事例を比較することで議論を展開する方向も模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの影響により、予定されていた2回の現地調査が実施不可能となったために次年度使用額が生じた。次年度はネパールの現地調査予定を1回から2回に増やし、また本年度より試行的に開始した日本国内の山岳地帯の調査も計画に組み込むことで予算を費消する。
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