研究課題/領域番号 |
20K13295
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古川 不可知 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (00822644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インフラストラクチャー / 山岳観光 / トレッキング / ネパール / ヒマラヤ |
研究実績の概要 |
本年度は2022年8月にネパール・ソルクンブ郡クンブ地方およびソル地方において、2023年3月にはソルクンブ郡ソル地方において、それぞれ一ヶ月弱の現地調査を実施した。 8月の調査は新型コロナウイルスの流行による中断を経た2年半ぶりの現地滞在となったため、山間部社会におけるコロナ下の生活とその影響や、山岳観光の現状、インフラ建設の進行状況の確認など、現状把握と基礎データの更新を主たる目的として情報収集をおこなった。3月は特にソル地方の車道建設をめぐる人々の実践と山間部社会への影響に焦点を当てて調査を実施し、開通した車道を踏査して周辺住民から聞き取りをおこなった。とりわけ主たる調査地であるカリコーラ村では生業や村落生活の変化などを聞き取ったほか、村落内の車両台数などの数値データを収集した。またジープ運転手やリペアショップの技師など、新たなビジネスを開拓した人々へのインタビューを実施した。 他方、コロナ下の代替調査として開始した日本の山岳観光をめぐる調査に関しては、9月に北アルプスの雲ノ平にて一ヶ月弱の調査を実施し、日本の登山道がいかに整備されているのか、現在の日本ではどのような人々が山に集うのか、また雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラムの観察を通して、日本において「自然」はどのように捉えられ、表現されているのかなどを考察した。 これらの調査は、ヒマラヤと日本の山岳地域の比較を通して広く山と人々の関わりおよびその文化的差異を明らかにするとともに、山間部の観光とインフラ開発がもたらす影響の比較分析を通じて日本とネパール双方の持続可能な山岳観光開発へと貢献するものでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は通算すると三か月弱の現地調査を実施し、新型コロナウイルスによる研究の停滞を多少なりとも取り戻すことができたと評価している。前年までの海外調査の中断のため、当初の計画であったネパール国内の比較よりもネパールと日本の山岳地域の比較へと焦点が移行したものの、口頭発表を中心に成果の公開も少しずつ進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は、補足調査と成果の公開を中心に作業を進める予定である。夏季にはソルクンブ郡にて一ヶ月ほど、北アルプスでは二週間ほどの現地調査をおこない、それらを踏まえてヒマラヤの村の「モータリゼーション」に関する論文と、日本の登山実践についての論文をそれぞれ執筆する。加えて移動をめぐる編著を刊行する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行によって実施できなかった調査の旅費が持ち越されていたため、本年度も執行残が生じた。次年度の補足調査にて全額執行予定である。
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