研究課題/領域番号 |
20K13305
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
高橋 脩一 専修大学, 法学部, 准教授 (80749614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民事訴訟記録 / 訴訟の役割 |
研究実績の概要 |
2020年度において、アメリカにおける民事訴訟記録の公開に関する分析につき、日米法学会シンポジウムでの発表(同発表の記録として、同学会の学会誌『アメリカ法』に「オンラインを通じた第三者による民事訴訟記録閲覧制度の法的根拠に関する日米比較」と題する論文([2020-2] アメリカ法 198頁)を掲載)及び論文の公表(「アメリカ合衆国における民事訴訟記録の公開とその意義に関する覚え書き-近年の密封を巡る連邦控訴裁判所判例の考察を中心に-」専修ロージャーナル16号117頁)を行い、本研究計画のうちアメリカに関する研究部分については、すでに当初想定していた以上の成果をあげた。 こうしたこれまでの実績を前提として、本年度はイギリス、特にイングランドに関する研究を中心に実施した。イングランドにおける訴訟記録の取り扱いに関しては、近年の最高裁判例の分析を中心として行って一定の成果を得、現在それをまとめている。それだけに留まらず、本年度はイングランドの司法制度に関するより理論的な研究を発展させるとともに、それと日本法との比較を試みる研究も進めてきた。その成果として、2021年11月には、“Asia-Pacific Private Law Conference 2022”に対して、イングランド法との比較の中で日本法における裁判所の役割に関する認識の変化を検討した“Are Views on the Role of Litigation in Japan Changing?: Lessons from the Law of Maintenance and Champerty in England”と題した報告に関するプロポーザルを提出し、翌12月にアクセプトされ、この発表を2022年5月に実施する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、すでにアメリカの民事訴訟記録の公開に関する分析に基づいた日米法学会シンポジウムでの発表及びその記録としての論文を公表するに至り、またジャーナルへの論文公表も行っているので、当初計画していたアメリカの民事訴訟記録の公開に関する研究部分は、想定以上に順調に進展している。 また、イギリスに関する研究も、上述のように国際会議での報告がアクセプトされるなど、着実な進展を見せている。そのため、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、本研究はアメリカに関する研究ですでに想定以上の成果を上げるなど、順調に進展している。そのため、さらなる研究を着実に実施し、公表できる成果を確実に出していくことが、今後の研究推進方策として考えられる。 こうした方策の方向性としては、主に2つの側面を考えている。1つめは、上述したイングランドにおける訴訟記録の取り扱いに関する最高裁判例の分析について、論文の形での公表に向けたさらなる研究を遂行することである。もう1つは、上述した国際会議での発表が決まっているイングランド法との比較の中で日本法における訴訟の役割に関する認識の変化を分析した報告を着実に行うとともに、その成果を今後論文として公表できるよう、さらなる研究を遂行することである。 最終年となる2022年度は、こうしたこれまで着実に積み上げてきた研究成果の上に、さらなる成果を上積みできるよう着実に公表できる形にまとめあげるような研究を推進していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
周知の通り、2020年度は新型コロナウイルスによるパンデミックにより、海外渡航はもちろんのこと、国内移動を行うことも難しく、当初予定していた旅費としての支出をすることが全くできなかった。そのため、そもそも2021年度は2020年度からの繰越金が相当程度生じている状態であった。 そのような状況に加えて、2021年度も2020年度に引き続き、新型コロナウイルスによるパンデミックは収まらず、海外渡航も国内移動もできず、当初予定していた旅費としての支出を全くすることができなかった。そのため、2020年度からの繰越金も含めて2021年度も残金が生じ、次年度使用額が生じることとなってしまった。 今後、パンデミックの状況が改善した場合には国内外の調査費用にあてるとともに、論文を執筆したときの校正費用や資料購入費にあてる事を予定している。
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