研究実績の概要 |
本年度の主な研究実績は、(1)英文査読誌への論文掲載の実現、(2)国際学会報告の実施、(3)国内学会報告の実施に分かれる。 (1)英文査読誌への論文掲載の実現については、社会科学の哲学の分野におけるIF付の査読誌であるSAGE社のPhilosophy of the Social Sciences誌に、数理モデル分析のシステマティック・レビューに関する単著の査読論文が掲載された。Sakai, R. (2020) ‘Mathematical Models and Robustness Analysis in Epistemic Democracy: A Systematic Review of Diversity Trumps Ability Theorem Models’, Philosophy of the Social Sciences, 50(3), pp.195-214. (2)国際学会報告の実施については、「欧州政治学会」の年次研究大会ECPRにおいて、熟議に関する数理分析をテーマとする研究報告を行った。Sakai, R. (2020) ‘Is Evidence-Based Evaluation of Deliberative Mini-Publics Methods Possible?: An Impossibility Result and its Silver Lining’, in Proceedings of the ECPR 2020. Online. (3)国内学会報告の実施については、「日本政治学会」および「公共選択学会」の年次研究大会において、熟議の数理モデル分析と憲法改正の手続への応用可能性についての研究報告を実施した。坂井亮太「憲法改正における混合熟議の可能性:アイスランドとアイルランドの憲法改正事例の認識的観点からの比較」日本政治学会 2020年度研究大会(オンライン、2020年9月26日)、坂井亮太「憲法改正におけるミニ・パブリクスの導入と政治家の参加効果:アイスランドとアイルランドの比較」公共選択学会第 24 回大会 (オンライン、2020年12月6日)。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の2年目となる2021年度は、本研究計画の一部の成果を専門書として出版することを目標とする。さらに、熟議、多数決、ベイズ更新についての個別の数理モデルに関する研究を進める。 まず、研究書を出版するなかで、本研究計画の理論的検討のパートを整理する。とくに、認識的デモクラシー論の特徴、数理モデルに対するシステマティック・レビューの導入、ロバストネス分析の実施例を提示する。著書の出版にあたっては、民間団体からの学術助成(三菱財団)も活用する。 つづいて、熟議の数理モデルである「多様性が能力に勝る定理」について、モデルの妥当性をめぐり政治理論から提起された批判を検討し、批判への応答を行う査読論文を公表することを目標とする。 多数決の数理モデル「コンドルセの陪審定理」については、類似モデルに対するシステマティック・レビューに着手する。コンドルセの陪審定理についてのレビューを実施した先行研究(Grofman, Owen and Feld, 1983)を乗り越えて、最新の研究を含めてシステマティック・レビューを再度実施することにより、近年蓄積が進む最新の研究成果を集約する。 ベイズ更新のモデルについての検討は、研究期間3年目の課題とする。
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