研究課題/領域番号 |
20K13548
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 和夫 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (00823189)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 西アフリカ / 発展経路 / 繊維産業 / グローバル・ヒストリー / 熱帯 |
研究実績の概要 |
本年度は、先行研究の整理と資料の読解を続ける一方で、日本語と英語で成果を発表した。主な成果については、以下のとおりである。 まず、大西洋奴隷貿易の最盛期から換金作物貿易への移行期(18世紀から19世紀半ば)に焦点を当てた日本語単著(『奴隷貿易をこえて』名古屋大学出版会、2021年)を刊行した。西アフリカにおける繊維需要・消費に注目することで、西アフリカと世界経済の関係を問い直した。とりわけインド綿布が大西洋奴隷貿易・大西洋経済の展開に果たした役割を評価することで、通説の「三角貿易」論を別のモデルに置き換える必要性を指摘した。この論点は、LSE経済史学科主催のワークショップとブラジルの植民地史会議(いずれもオンライン会議)においても発表した。また、上記の論点に関連して、商品連鎖論の観点も踏まえた論文も執筆した。この論文は、22年度に論文集の一部として刊行される予定である。 次に、植民地期の西アフリカ経済にかんする文献研究を進めた。それを通じて、植民地化以前に始まっていた換金作物の輸出生産が植民地政府の財政収入にとっても重要になっていた点をはじめ、換金作物生産における移住労働や奴隷の役割など、植民地化以前と植民地期の連続性と変化にかかわる基本事項について確認した。それを踏まえて、植民地化以前から植民地期にかけての経済発展にかんする日本語論文を執筆した。そこでは、他の熱帯地域の経済発展との比較研究を可能にするための論点を強調している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は3点あげられる。まず、18世紀から19世紀の西アフリカの経済発展、とりわけ繊維製品の交易や消費にかんする研究成果として、日本語単著を刊行したことである。次に、海外調査の実施は今年度も見送ることになったものの、これまでに収集してきた史資料を通じて、19世紀から20世紀前半にかけての西アフリカの経済発展にかんする日本語論文を執筆したことがあげられよう。最後に、海外調査の目途が立たないことから、研究申請書の作成時点で構想していたガーナやナイジェリアにかんするケーススタディは進んでいないものの、ガンビアの資料の読解は進んでいることである。その成果については、22年度夏の世界経済史会議で報告する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
渡航制限は徐々に緩和されてきたものの、航空券の高騰など、依然として海外調査の目処は立たない状況にある。来年度は、イギリスや西アフリカでの調査の可能性を探りつつも、手持ちの資料と入手可能な文献をベースとして研究を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
資料データの整理で研究助手を雇用した際、当初の想定よりも早く業務が完了したため。次年度の物品日・旅費に計上する。
|