研究課題/領域番号 |
20K13615
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 景子 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (40801410)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 支払いの痛み / デジタルマネー / モバイルデバイス / UI/UX / 感覚刺激 |
研究実績の概要 |
本研究は,購買プロセスにおけるオンライン顧客経験価値の形成メカニズムの解明を目的とする。特に,購買プロセス上で発生する消費者の心理的負担を解消し,ネガティブな購買経験を回避するための仕組みを明らかにする。 モバイルを活用した顧客とのキャンペーン共創に関する研究を遂行する過程で,モバイルデバイスによる顧客とコミュニケーションのあり方を再考する余地があることが示された。そこで本年度は,モバイルから与えられる感覚刺激を介してユーザがデジタルなモノ,特にデジタルマネーに対してどのような知覚を得ているのか検証を開始した。 さまざまな知覚のなかで,今回は「支払いの痛み」に着目した。支払いの痛みに関連する先行研究にもとづき,この知覚を得る要素を感覚刺激として組み込んだ支払いアプリケーションを作成した。刺激を組み込んでいないアプリと比較して,どのように支払いの痛みの感じ方が変化するのかを検証する実験室実験を計画した。しかし,当初予定していた実験計画に問題があることが明らかになったため,急遽実験計画を大きく変更することとなった。実験計画の再策定はあったものの,次年度には実験を実施できる段取りをすべて整えることができた。 本年度策定した実験計画にもとづき,次年度早々にも実験を実施する予定である。同年度中に国際学会での成果報告(ISMS Marketing Conference 2024)をもとに研究内容をブラッシュアップし,次年度以降の論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,2022年度に着想した新規研究課題に重点的に取り組んだ。 1つ目の課題は,モバイルデバイスが与える感覚刺激によって,モバイル決済利用時の消費者心理や支払い行動がどの程度変化するのかを明らかにするものである。当初,研究協力企業のもと,この検証を実験室実験にて行なう想定で準備を進めていたが,期中に当該実験デザインの問題点が明らかになった。そこで再度文献調査を行い,消費者のモバイル決済利用行動に関する新たな仮説を着想するとともに,オンライン実験による当該仮説の検証方法を整理した。この仮説の再構築と実験計画の再策定により,当初想定していたよりも多くの時間を実験準備に充てることとなった。しかし,次年度に実験を実施するために必要な準備は,本年度中にすべて完了することができた。 2つ目の課題として,2021年度に実施した顧客とのキャンペーン共創に関する研究を進展させた。共創型キャンペーンでより多くの回数買い物をする顧客の特徴がどのようなものかを明らかにする研究を行い,この研究成果を国内学会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
モバイルデバイスが与える感覚刺激によってモバイル決済利用時の消費者心理や支払い行動がどの程度変化するのか,を明らかにする研究に引き続き従事する。2024年度はモバイル決済アプリのユーザ・インターフェースの違いがモバイル決済利用行動の変化に与える影響を検証するためのオンライン実験を実施し,データを収集・分析する予定である。同年度に開催される国際会議(ISMS Marketing Conference 2024)での研究成果報告等を通じて,分析内容をブラッシュアップする。また,この課題を実際の買い物現場で検証するフィールド実験を行うための準備を進めていく予定である。 2024年度は本助成の最終年度に相当するため,これまでに得られた研究成果のまとめと外部発表にも注力する。2023年度までの研究成果をまとめた論文2編については,引き続き国際学術誌への採録を目指す。2024年度中に実験を行う予定の研究成果については,すべての実験および結果の分析が完了し次第論文としてまとめ,2025年度以降の国際学会での発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初実施予定だった実験において,実験デザインに問題があることが明らかになった。そのため,仮説の再構築と実験デザインの再策定が必要となった。当初想定していたよりも多くの時間を当該作業に充てる必要があったため,予定年度中に実験を完了することができなかった。この実験の準備にかかる費用や実験参加者への謝礼金などを,次年度使用額として繰り越すこととした。実験実施に伴う計画はすべて完了しているため,次年度中に予算を使用する目処はたっている。
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