研究課題/領域番号 |
20K13666
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
逢坂 裕紀子 東京大学, 文書館, 特任研究員 (80864602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会学 / 都市論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近代の日本において、内国勧業博覧会を契機として美術工芸関係者や関連産業がどのような移動と集中の現象をみせたのか、そして美術と地域に関するいかなる歴史叙述が生産されてきたのかを分析することである。地理的対象は、第1回から第3回の内国勧業博覧会開催地であった東京と、第4回開催地の京都、そして第5回開催地だった大阪としている。 2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大にともなう緊急事態宣言の発令の影響を受け、当初予定していた資料調査を十分に行うことができなかった。しかし、限られた機会のなかで愛知県図書館、大阪市立中央図書館、大阪市公文書館(大阪府)、京都府立京都学・歴彩館での資料調査をおこない、博覧会開催と都市計画の関係を示す資料の収集・分析を行った。愛知県図書館での調査からは明治43年に開催された「三府二十八県第十回関西府県総合共進会」の関連資料を調査し、実施会場となった鶴舞公園が同共進会開催にあわせた精進川埋立事業をはじめとする土地開発で整備され、市内鉄道の敷設とも結びついていることが明らかとなった。同様の事例は、第4回内国勧業博覧会会場である京都市岡崎公園、第5回内国勧業博覧会会場となった大阪市天王寺公園においてもみられ、明治期における博覧会開催が都市開発事業や市内交通網整備など都市の近代化における文脈と結びついていることを確認した。 京都市内の調査では、当時の美術家たちの居住地の変遷に関する資料の調査にも着手した。京都府画学校の開校にともなう美術家たちの移動と集中についての資料調査を引き続き進め、今後分析をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により図書館や文書館、各研究所の図書室の利用をはじめとする外出が著しく制限されたことにより都内での調査活動にも支障をきたした。 また、当初計画では京都・大阪での資料調査など東京都外への出張を9回予定していたが、同じく新型コロナウイルス感染症の影響により3回のみの実施となった。地域の公式の歴史叙述は、自治体が発行した都道府県史・市町村史に著されることが多く、博覧会開催や博物館や美術学校の開設もそのなかに位置付けられている。また、美術関係機関による年史資料にも地域に関する記述をみることができる。それらの叙述を共時的・通時的に比較検討し、美術と地域に関する叙述の内容や叙述スタイルの変化と差異を明らかにするため、現地での資料調査が必要不可欠であるがそれらを十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
内国勧業博覧会開催地であった東京・京都・大阪を対象とし、1. 美術工芸関係者たちの移動と集中の解明と、2. 美術と地域に関する歴史叙述の分析を行うことで、近代美術制度の形成と都市空間の変容の関係性を分析することである。明治期・大正期に活動していた美術工芸界の関係者に関する資料の調査分析と地域に関する歴史記述の分析を行い、彼らの移動と集中がその後の都市空間の形成や変容にどのように作用したのかについて検証する。 明治大正期に刊行された書画家番付や博覧会関係資料、先行研究から美術工芸関係者の住所や関連産業の所在地に関する情報のテキスト化を行い、デジタルマップ上に位置付けることでその移動と集中を明らかにする。明治維新以降、幕藩体制において維持されていた絵師や彫金師の社会的ネットワークの解体と再編が指摘されるが、美術工芸者たちの移住の過程は十分に解明されていない。具体的には国立文化財機構東京文化財研究所が2018年に公開した明治大正期刊行の書画家番付のデータベース上のテキストデータや、『内国勧業博覧会出品目録(第一回から第五回)』(内国勧業博覧会事務局)及び『温知図録:調査研究報告書』(東京国立博物館)、東京藝術大学大学史史料室所蔵資料などを対象として、得られたデータの量的分析をもとに近代化における美術工芸関係者の移動と集中、制度、地域の関係性を検討する。さらに、作家本人、博覧会・学校関係者、美術団体、地域住民、研究者など、多様な主体による、美術と地域についての叙述を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナウイルス感染症の影響により当初予定していた都外での調査が十分に行えなかったためである。2021年度は感染拡大状況を鑑みつつ、資料調査に赴く予定であるが、現地を訪れることが難しい場合には複写請求などにより資料調査を実施することとする。
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