研究実績の概要 |
本研究は、再生産領域やインフォーマルセクターも視野に入れ、高学歴女性のキャリア継続の課題を、日本社会のジェンダー構造との関係において明らかにすることを目的としている。もっとも重視したのは、女性キャリア形成と家族をめぐる相互関連を方法的にいかに捉えるべきかをめぐって、国内外の文献サーベイ、国際学会での最先端の議論への参加等を通じて、方法論を彫琢することにおかれた。その成果は、East Asian Social Policy research Network (The 19th EASP Conference)や、2024年に刊行される書籍『労働環境の不協和音を乗り越える』で発表予定である。 本研究のもう1つの柱は、こうして吟味した方法論を用いて、首都圏において1960年代に入職した女性教員の労働-生活史のインタビューデータをもとに、上記の課題に実証的に迫ることにある。そのために、研究の着手時点では首都圏で親族以外の家政婦や近隣の住民による託児の支援を得ながら、出産後も継続就労した女性教員を主要対象として設定し、主婦化が進行する時代の渦中に先鋭的に表出した、キャリア形成と家族のケアの連関を把握する構想を描いていた。だが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、高齢な調査対象者へのインタビューに制約が生じ、代わりに、資料提供を受けたため、この資料をできる限り生かした研究を構想するに至った。この成果を"An Historical Analysis of the Highly-educated Women's Labor Force in Japan" (Journal of the Institute of Community & Human Services, Rikkyo University, vol.10, 2022) において発表し、書籍として刊行するための準備を進めている。
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