令和4年度においては第1に、『資質・能力時代の生活科 知性と社会性と情動のパースペクティブ』(三恵社)を刊行し、その第2章と第6章に研究の成果を記した。第2章では、アメリカの幼児期の教室において協同的な探究的学習形態を採用するプロジェクト・アプローチの理論と実践について記載した。その章において、情動が探究的な態度の形成に関与すること、また、プロジェクトにおける協同的な問題解決が社会的コンピテンスを促進し、その社会的コンピテンスが更に探究的な態度を涵養することなどを提示した。第6章においては、探究的な学習において涵養され得る知性、社会性、情動をどのように見取るのか、探究的な学習における評価のあり方について検討して記載した。 第2に、『教科開発学論集』第11号に論文を投稿した。タイトルは「ミズーリ大学附属初等学校における領域「観察」に関する研究」である。新教育運動の系譜の中に位置付けられる生活科の探究的な学習形態は、同じく新教育の系譜に位置付くメリアム(J. L. Meriam; 1872-1960)によるミズーリ大学附属初等学校における総合教科である「観察」と類似している。その「観察」の理論と実践を分析し、生活科教育のあり方に若干の示唆を述べた。 本研究において、当初予定していた学習教材の作成・実践・検証には至らなかった。それでも、生活科探究的学習理論を構築するための知見をプロジェクト・アプローチや新教育の動向より得ることができた。
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