研究課題/領域番号 |
20K13894
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上山 浩次郎 北海道大学, 教育学研究院, 講師 (60751089)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育機会の不平等 |
研究実績の概要 |
当該年度は、まず、昨年度に行った教育機会の不平等における地域と社会階層の関連構造に関する研究の論文化作業を行い、論文として公開した。具体的には、進学行動に対して、地域的変数は社会階層的変数を通して格差を生成していたものの、社会階層的変数に還元できない形でも地域的変数は格差を生成していたことを明らかにした。次に、教育機会の不平等における属性的要因同士の関連のうち、特に性別と社会階層の関連構造に関する理論や仮説の検討を行った。具体的には、性別専攻分離に関する欧米圏の先行研究を整理し、その中で性別と社会階層の関連がどのように理論的に整理されているか、検討を行った。例えば、低階層の者ほどジェンダー典型的な専攻選択を行うこと、逆に言えば、高階層の者ほどジェンダー非典型的な専攻選択を行うことという「インターセクショナリティ(交差性)仮説」等が提唱されていることを確認した。なお、「インターセクショナリティ(交差性)仮説」に関して、地位維持に関わるメカニズムが想定されるだけでなく、高い学歴を持つほどジェンダー平等的な意識をもつために上記の傾向がみられると想定されていた。関連して、性別専攻分離に関する研究のレビューを行った。その結果、欧米圏に比べれば、我が国の社会を対象とした研究は十分とは言い難い状況にあることを確認した。それを踏まえて、性別専攻分離に関するデータの整備状況を確認しつつ、性別と社会階層の関連構造を検討する前提として、そもそもの性別専攻分離の実態を明らかにする必要があるとの示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の予定していた論文の公表を行うことができたため。また、研究会等参加のための旅費が予定よりも少額になったことから(コロナの影響)、先行研究の収集・整理を重点的に行うこととしていた。その点を踏まえて、性別に関する教育機会の不平等に関する研究のレビューに取り組んだ。その結果、性別と社会階層に関連する理論仮説の整理を行うことができただけでなく、そもそも性別専攻分離に関する研究が十分とは言い難い状況を確認し、今後の研究課題の示唆を得たため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度研究を進めることで明らかになった性別と社会階層の関連構造に関する理論を日本社会で実証できるかデータ整備状況などを含めて検討する。あわせて、その性別との他の属性的要因との関連構造を検討する際の前提とすべき、性別専攻分離に関して実証的な検証が可能か、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会等参加のための旅費が不要になったため(コロナの影響)。使用計画としては、統計ソフト等の購入さらに、今後も学会や研究会に関する旅費が不要になる場合を想定し、先行研究の収集・整理を重点的に行うこととする。
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