研究課題/領域番号 |
20K13901
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中野 元太 京都大学, 防災研究所, 助教 (90849192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 防災教育 / 国際支援 / ビジュアルエスノグラフィ / カルチュラル・チューニング / メキシコ |
研究実績の概要 |
本研究は、国際防災教育支援において、支援者と被支援者それぞれの見方の差異が防災知識・技術の定着を阻害しているとの仮説に立っている。ここで言う見方の差異には、支援活動に参加・関与する当事者(支援者と被支援者の双方を含む)それぞれが属する文化的背景に基づく災害に対する見方の差異や、当事者それぞれの主観的現実の差異(同じ国際防災教育支援活動に対する多声的で多角的な見方)が含まれる。 この観点から、国際防災教育支援活動に参加・関与する当事者の多声的で多角的な見方を可視化する手法を開発した点で進捗があった。具体的には、まず、研究代表者が関わるメキシコでの国際防災教育支援活動を撮影・記録した動画データを編集して防災教育支援のビジュアル・エスノグラフィ(VE)を制作した。同VEは、研究代表者が記録・編集したものであるから、研究代表者の見方(支援の効果や評価)が反映される。そして、この研究代表者の見方を反映したVEを国際防災教育支援の当事者(被支援者)とともにオンライン上で共同視聴し、VEに対する当事者らのフィードバックをコメントビデオとしてまとめた。このコメントビデオは、同じ国際防災教育支援活動に対する、被支援者の見方を反映したものである。研究代表者の見方としてのVEと当事者の見方としてのコメントビデオを「時間的前提」「空間的前提」「人間関係的前提」「活動への評価」の視点から分析し、一つの活動に対する多声的で多角的な現実が併存すること、この併存する現実を可視化すること、いいかえれば当事者間での差異が存在することこそが、防災教育支援の定着と発展に寄与することを論じた。また、防災教育教材を移転先に合わせてカルチュラル・チューニングする際に、災害リスク、社会規範、使用方法などがどのように修正され、定着するのかに関する研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、当該年度の研究活動としてネパールおよびメキシコでの現地調査と対面でのインタビューを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染症による海外渡航制限によって実施できていない。そこで、メキシコを対象としてオンライン・インタビューや文献調査、既存のデータ(動画やアンケート調査)等も併用して、上記の通り研究を進めることができている。このことから「おおむね順調に進展している」とした。一方、ネパールについてはオンライン環境が整っておらず十分な進捗は得られていない。今後、本研究をさらに進めていくためには、現地調査が必須であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
支援者と被支援者との間の災害観の差異を克服する国際防災教育支援においては、カルチュラル・チューニングの理論的・実践的整理は必須であることから、次年度も研究を継続する。同テーマについて、学会発表や論文化をしていく予定である。さらに、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みながら、メキシコおよびネパールでの現地調査の実施を検討し、当初の研究計画通り、両国での災害に対する見方を明らかにするための防災教育アクションリサーチ、インタビュー、およびレビューを実施する。これらの結果に基づいて、災害に対する見方に基づく社会形態を考察し、被支援者の社会でも定着する防災教育支援手法の理論的枠組みを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航が制限されている。そのため、計画していたネパールおよびメキシコ渡航が実施できず、旅費の支出が予定を下回った。このことから次年度使用額が生じた。 次年度以降、海外との往来緩和が予想されることから、海外渡航用の旅費として使用する予定である。
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