研究課題/領域番号 |
20K13915
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
栗原 麗羅 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (40848652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドイツの学校制度 / 教育機会の平等・公平 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、分岐型学校制度を採用するドイツの前期中等教育に着目し、教育機会と結果を保障するための習熟度別指導の方法を明らかにすることである。研究実施計画では、1~2年目にドイツの分岐型学校制度に関する史資料の現地調査および翻訳・分析作業を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により現地調査を実施できなかった。 そこで当該年度は、これまでに入手した史資料を基に、ドイツの中等教育から高等教育への接続改革の動向に着目した研究を行った。研究結果の概要は以下の通りである。 ドイツでは分岐型学校制度の弊害として、ギムナジウム進学、アビトゥーア取得という進路を経て大学に進学する機会が、生徒の社会的出自によって異なるという問題が指摘され続けてきた。そこで、ギムナジウム進学機会の拡大とともに、ギムナジウム以外の学校種で(専門)アビトゥーアを取得できる進路の設定といった取り組みがなされ、その効果も出てきた。一方で、アビトゥーア試験問題(レベル)の州間格差が問題化され、教育スタンダードや共通問題の導入といった改革に至った。 改革を分析した結果、試験で問われる内容にも変化が見られていることが明らかになった。以前は、与えられたテキストの解釈、分析を求める問題が中心であったのに対し、教育スタンダードに基づく現在の試験では、自身の主張に必要な資料を取捨選択し、解釈した資料の内容を基に特定の読者層に向けたテキストを執筆するという問題形式が加えられた。すなわち、必要な資料(情報)を収集・分析し、相手が求める情報(意見)を伝えるという実生活に即した言語能力および情報活用能力の育成が目指されているのである。 本研究の成果は、日本の大学入試改革に関する研究にも示唆を与えると考え、2021年6月の第37回日本ドイツ学会大会で共同発表を行ったとともに、『ドイツ研究』56号に共著論文として寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の主要な研究方法は、文献分析・考察である。本研究課題に関するドイツ語文献の所蔵状況が日本国内の図書館において十分ではなく、資料をドイツ国内の大学図書館等で入手する必要があることから、科学研究費助成事業に応募し、採択された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりドイツへの渡航が長期にわたり制限されており、文献資料を十分に入手できていない(よって、当該年度の支出額は0円である)。 以上の理由から、本研究課題の進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が収束し、史資料収集のためにドイツに渡航できる目途は現時点(2022年5月)では依然として立っていない。そこで、入手可能な量は限定的となるが、日本から発注可能な文献を購入するとともに、インターネット上に存在する史資料を活用し研究を進めていく。 2022年度は、これまで研究を進めてきた教育機会の平等の概念分析の結果をまとめ、学会発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に関する文献をドイツ国内の大学図書館等で入手する必要があることから出張旅費を請求した。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりドイツへの渡航が制限され出張が不可能であった。渡航制限が解除され次第、ドイツ出張を行う予定である。
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