本研究の目的は、1)幼児教育・保育におけるアクティブラーニングのユニバーサルデザイン化に必要な要素を明らかにし、2)幼児教育・保育での実践を支援するためのチェックリストを開発することであった。 しかし、COVID-19の感染拡大により、研究開始と同時に、何らかの配慮を必要とする幼児(以下、要配慮児とする)が在籍する保育所・幼稚園・認定こども園(以下、幼児施設とする)に赴いての調査が極めて困難な状況にあった。そのため、2022年度より、本研究への協力が得られた幼児施設に赴いての調査を行い、幼児教育・保育におけるアクティブラーニングの実践に関する現状と、ユニバーサルデザイン化に向けた課題を明らかにすることとした。 2023年度は、研究を総括するために、前年度の調査によって収集したデータの分析を進めた。その結果、①アクティブラーニングの実践においては、担任教諭などの大人の働きかけ方が、主体的・対話的な場面のユニバーサルデザイン化に影響すること、②アクティブラーニングを進める上では、情報提示の仕方や要配慮児を含む個々の幼児に対する大人の見方が課題となっており、特に後者が周囲の幼児や活動そのものにも影響すること、の2点が明らかとなった。 加えて、2023年度は、幼児施設に勤務し、3歳(年少)児以上のクラスを担当する保育者を対象に、Webでのアンケート調査を行い、アクティブラーニングにおけるユニバーサルデザイン化に向けた現状と課題を明らかにした。調査の結果、要配慮児が在籍するクラスほど、アクティブラーニングを伴う活動に取り組んでおり、「場の構造化」や「ルールの確立」、「指示の出し方」について、特に工夫されている現状にあった。一方で、「場の構造化」や「活動の見通し」が、アクティブラーニングに取り組む際の工夫として、課題となっていることも明らかとなった。
|