研究課題/領域番号 |
20K13976
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
瀬川 朗 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 講師 (80848523)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 教師 / 職能成長 / ライフストーリー / ナラティヴ分析 / 自伝的推論 |
研究実績の概要 |
本研究では,個人的生活が職能成長に深い影響を与えると考えられる家庭科教師について,ワーク(職業生活)とライフ(個人的生活)の相互の影響を可視化すること,そしてその成果を元に,教職志望学生を対象としたプログラムの開発を目指している。令和2年度は,教師のライフストーリーおよびライフヒストリー研究の知見を整理するとともに,教師の個人的生活経験がどのような経路を通じてカリキュラム・デザイン(教科指導)へと影響するのかをモデル化することを試みた。後者については,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,新規の授業観察およびインタビューが実施できなかったため,すでに収集したデータをもとに(1)家庭科教師がライフストーリーの語りにおいてどのような種類の人生における出来事を現在の家庭科カリキュラム観の変容と関連づけているか,(2)出来事とカリキュラム観との結びつけられ方にどのような特徴があるのか,の2点について類型化による分析をおこなった。その結果,個人的生活経験がカリキュラム・デザインと関連する,あるいはカリキュラム・デザインへと影響する道筋の種類として,《方略としての個人的生活経験》《問題意識の源泉としての個人的生活経験》そして《原体験としての個人的生活経験》の3つの類型が生成された。すなわち,自らの経験を直接的に活用する《方略としての個人的生活経験》,そしてその背景に経験をもとに形成した学校教育や社会に対しての問題意識をカリキュラムへと反映させる《問題意識の源泉としての個人的生活経験》の道筋があり,さらに幼少期・学童期の家庭環境や被教育経験が《原体験としての個人的生活経験》として問題意識の形成を含む思考や行動の基底となるという経路があることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度~令和3年度前半にかけて対象者へのインタビュー調査および授業観察調査の実施を計画していたが,新型コロナウイルス感染拡大の影響によりかなわず,文献レビューと既存のデータの分析に充てることとなった。一方,令和3年度後半~令和4年度に実施を計画していた教職を志望する学生への教職イメージ・教科観醸成プログラムの開発を計画より早期(令和3年度前半)から実施できるよう,家庭科カリキュラム観の形成と変容に関する仮説的モデルを生成するなどの準備に取り組み始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度に実施できていない,フィールドにおけるインタビュー調査および授業観察調査を実施し,職業生活と個人的生活の両立で過去にどのような問題を抱えていた(抱えている)か,また,授業実践に個人的生活がどのような影響を与えたかに焦点化したインタビューをおこなう。なお,インタビューに際しては,家庭科カリキュラム観の形成と変容に関する仮説的モデルを用いた省察を取り入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に計上していた物品費の一部については,予定していた授業観察調査が新型コロナウイルス感染拡大により実施できなかったため支出しなかった。旅費・その他については,出席予定であった学会大会の中止・延期およびオンライン開催のため支出がなかった。令和3年度も同様の状況が継続する場合には,オンライン開催の学会・研究会での発表等に必要な機器の購入費用としての支出を予定している。
|