研究成果の概要 |
本研究では, 【映像的触覚知】の定義を基に美術教育の特定の活動によって触覚と視覚を繋げる実践をおこない, 近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy, NIRS)を用いて分析した。その結果, 映像視聴時にも触覚野が賦活するようになることが分かり, 触覚を脳内で生成して鑑賞する能力育成が可能であることが判明した。一方で触覚刺激の脳内生成といった認知能力は個人差が大きく、アファンタジアなどを含め, その認知の多様性も明らかとなった。本研究の成果は多様な認知特性に従って個別最適化した想起方法や思考,表現,鑑賞のプロセス開発の必要性を示唆している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の成果は, 映像メディアに特異な美術教育の授業実践を通して視覚以上に多様な感覚を脳内で賦活して鑑賞する認知能力開発に一定の効果を得られる可能性があると認知科学的に明らかにした点である。また, 心的視覚イメージを想起しないアファンタジアスペクトラムの発見とこれまでの学術的成果の調査は美術教育の方法論を科学的に規定する基盤となりえる。本研究によれば先天的特性に沿わない認知特性開発には大きなストレスがかり教育効果は薄い, むしろ先天的認知の多様性にそって,サポート方法を構築する方が美術教育上の教育効果が大きくなることが予見され, 研究成果は美術教育の方法論を問い直すものである。
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