研究課題/領域番号 |
20K14050
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 恵 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 寄附講座助教 (50818664)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 過集中 / RRB / 感覚特性 / 身体感覚 / 失体感症 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム(Autism spectrum disorder:ASD)は生まれつきの社会性の障害であり、近年は成人になって初めて社会場面で困難が生じる軽度の特性を有するAS者へのメンタルサポートや理解が社会全体で課題となっている。あるタスクに夢中になりすぎる過集中という行動様式(Brandon K.,2019)は、外的環境との摩擦や疲労感等の不適応を呈する一方、高いパフォーマンスにつながる本人の強みともなりうる。本研究の目的はその特異性を明らかにし、より効果的な対応を提案することである。 具体的には①データベースによる後方視的研究、②インタビュー、の主客2軸から検討する。①データベースの数値は入力済みだが、本研究で重要となるASD診断の精度を高めるために、昨年度に引き続き、複数名の専門家による診断カンファレンスを継続している。SRS-2、AQ、STSS等の質問紙データおよび認知機能検査から、過集中と関係の深いファクターを明らかにし、その機制メカニズムの仮説を立てる。②インタビューは、現在32例(本人23例、家族9例)を施行している。その内1例の事例研究を行った結果、緊張感を伴う作業型と、リラックス感を伴う休憩型の質の異なるエピソードが抽出された。この結果を土台に全例を対象にテーマ分析(Braun,2006)を行い、より普遍的な体験構造を明らかにする。当事者の内面から語られる主観的な体験を中心に、身近な行動観察者である家族からのインタビューやデータベースなどの客観的データを組み合わせることで、より本人へ寄り添った支援の実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究は、類似体験についての概念整理を進めている。データセットはほぼ完成しているが、診断名のカンファレンスがやや遅れている。 インタビューは目標40例中32例実施し、本人のみであれば目標例に到達している。現在、インタビューデータの文書化および分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
インタビューデータの分析を優先して取り組み、年度内の論文化を目指す。同時にデータセットの整理および診断カンファレンスを精力的に行う。現在もインタビュー調査は実施中だが、データ対象者数の妥当性が認められれば、調査期間終了の時期を定める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行により、発表のための旅費が発生しなかったため。その分、オンライン環境の整備に代替されている。 論文化作業が計画より遅れていることから、英文校正費などに使用できていないため。今後使用される。
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