研究課題/領域番号 |
20K14054
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
外山 稔 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 准教授 (30746095)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 語彙年齢 / 構文の発達 |
研究実績の概要 |
本研究は、先天性聴覚障害児が言語を習得するために必要となる要素的な機能と相互作用を明らかにすることを目的としている。本研究計画は、①聴覚障害児68名の要素的言語機能の分析(既存検査データの分析)、②言語習得過程の多重指標モデルを検証するための横断的調査、の2側面から構成される。 研究開始2年目となる本年度は、①SPSS Statisticsによるデータ分析を開始した。昨年度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大に伴い未実施となっていた欠損データの再収集は、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の発令状況を鑑みて本年度も保留とした。既存検査データの修復および再検査が必要と考えられた児への検査は実施できていない。②昨年度の研究期間内に研究参加の同意・代諾が得られた就学前の聴覚障害児の裸耳聴力と矯正聴力、WPPSI-Ⅲ知能検査、PVT-R絵画語い発達検査のデータを収集し、医療機関及び母親の記録に基づく言語発達の過程を整理した。本年度は対象児数を拡大する予定であったが、COVID-19小児感染者数の増加による対人接触上の制約が生じ、研究参加対象児の新規募集(本年度分)は中止した。なお、昨年度の研究期間内に研究参加した両側高度難聴児(両耳補聴器装用児)の言語発達について、3歳3ヵ月時点の理解語彙数は聴覚読話1,563語、音声表出語彙数は1,304語、同年齢までに表出された文型(構文)は授受構文、受身文、関係節文、仮定・条件文、使役文であることを同定し、第66回日本聴覚医学会総会・学術講演会に於いて報告した。次年度、感染予防対策及び小児のワクチン接種状況を総合的に勘案し、言語発達に係る調査を続ける計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始2年目となる本年度は、①既存データの修復および再検査が必要と考えられた児の再検査、②聴覚障害児の横断的調査対象児数の拡大を予定していた。研究①及び②に係る共通事項として、本年度の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の発令、本年度後半に報じられたCOVID-19小児感染者数の増加が対人接触上の制約となり、研究の遂行に大きく影響した。研究①は既存検査データの解析を一部進めてはいるものの欠損データの再収集には至らず、研究②は横断的調査対象児の新規募集停止を余儀なくされている。上記理由により、当初の研究計画に比し「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の推進方策は、次の通りである。①聴覚障害児が日本語を習得するための要素的機能を聴力および言語検査の結果から同定する。また、多重指標モデルおよび因子間相互モデルの作成による言語習得過程のスキル構造の抽出を予定している。②聴覚障害児の横断的調査対象児数を拡大してデータ収集を続ける。COVID-19の収束状況及び感染対策、小児のワクチン接種状況等を総合的に勘案し、地域在住の研究協力者と検討を重ねながら研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、次の2つである。①データ収集の機会を十分確保できなかったため旅費の使用額が予定を下回った。次年度、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束傾向にあると判断され次第、対象児のデータ収集を集中的に実施する。②横断的調査に参加した児への謝礼(図書カード)支払いは済ませたものの、横断的調査に参加する聴覚障害児の新規募集停止を余儀なくされたため参加児数が予定を下回った。次年度、調査の対象児数を拡大してデータ収集を続ける予定である。
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