本研究の目的は、専門家と市民とが協力して実施する市民参加型の研究活動「citizen science」の日本における広がり、およびcitizen scienceに対する専門家や市民の認識を調べることである。さらに、citizen scienceが含むトップダウン要素とボトムアップ要素がそれぞれ「シチズンサイエンス(主に科学者が主導し科学研究を目的とする)」と「市民科学(主に市民が主導し地域問題や社会課題の解決を目的とする)」という用語に対応して使われる傾向があることに着目し、両者の統合に向けた理論的枠組みを構築することを目指した。最終年度は、citizen scienceに対する日本の市民の認識を調べるために、2つのオンライン調査を実施した。1つめの調査は、20-69歳以上の男女2000名を対象にした。質問項目には、シチズンサイエンスおよび市民科学の認知度、citizen scienceに対する意欲、科学に市民が参加することについての態度などを含めた。その結果、約5%の回答者がシチズンサイエンスおよび市民科学の用語を認知していた。次に、約15%がcitizen scienceに参加したいまたはとても参加したいと回答した。この割合は2018年の調査結果とあまり変わらなかった。さらに市民が科学に参加することは科学の進歩に役立つまたはとても役立つと思うと回答した者は約40%だったが、自身が参加することが科学の進歩に役立つまたはとても役立つと思うと回答した者は約30%に下がった。2つめの調査は、首都圏に住む20-60歳以上の男女2000名を対象にした。科学を共有する場としての国立科学博物館に注目し、同博物館の来館経験とcitizen scienceに対する興味の関係を調べた。その結果、来館経験が多いほどcitizen scienceへの興味の程度が高いことがわかった。
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