研究課題/領域番号 |
20K14201
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
孫 怡 立命館大学, 立命館アジア日本研究機構, 助教 (10794688)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 親子関わり / 食事場面 / 問題行動 / 日中比較 / 母親well-being / 行動観察 |
研究実績の概要 |
本研究は3年間での完成を目指し,日本と中国において1~3歳児を持つ母子を対象に,幼児期の食事場面における親子関わりを切口として,親子の関わりと心身健康との関連を明らかにすることを目的としている。 今年度も新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず,その影響を受けて,中国への渡航ができず,感染予防のため,日本と中国における家庭訪問も中止せざるを得なかった。それに応じて,前年度と同様に実施方法を再検討し,家庭訪問による行動観察の代わりに,協力者自らの自宅撮影によるデータ収集方式に変更した。オンライン会議を通じて中国の共同研究者とも打ち合わせを行いながら,自宅撮影の実施手順やビデオ撮影の注意点,倫理配慮事項などを確定したうえで,中国現地における協力者の募集と実施は共同研究者である姜露(上海師範大学准教授)に依頼した。現在,日中とも順調に自宅撮影によるデータ収集を行っている。協力者の要望に応じて,事務局から協力者の自宅まで撮影機材と説明書などを郵送し,その後研究協力者自身が自宅で親子の食事様子をビデオカメラで撮影し,録画された動画を研究者に返送するという形で,食事場面における親子のかかわり様子のデータを取得した。現時点で,日本と中国の都市部において1~3歳児の親子食事動画データそれぞれ30組を収集し,本課題の研究1の目標を達成できた。現在,研究員2人以上で得られた動画データをコーディング・分析している。 これまで得られた親子のかかわりや母親のwell-beingに関連する研究成果は,日本心理学会第85回大会,日本パーソナリティ心理学会第30回大会および日本発達心理学会第33回大会にて発表した。また,学術ジャーナルへの論文投稿も積極的に行った。本年度は日本語論文1本と英語論文1本が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症の世界的感染拡大の影響を受けて,海外渡航を伴う会合や調査実施が困難な状況にある。この状況に対処するべく,オンラインによる海外の共同研究者と研究打ち合わせを実施し,現状に応じて対面調査を自宅撮影へ変更するために時間を要したため,進捗に若干の遅れがみられる。実施方法の変更にあたって,調査実施の手順変更や研究協力者の再募集,倫理配慮事項の再検討,自宅撮影用機材の調達など変更手続きが多く,これまでこのような実施経験がなかったため,試行錯誤にも時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
日本と中国で収集してきた動画データ(各国30組×2国)を用いて,専門知識を持つ研究員によりコーディング・分析を行い,食事場面における親子かかわり行動指標の開発を検討していく(研究1)。行動指標の妥当性・信頼性を検討したうえで,構成項目を修正し,行動指標を作成する。次に,日本と中国において1~3歳の母子を対象に質問紙調査(家庭基本情報,母親の性格特性・食事に対する認知・食育ストレス・生活満足度,幼児の気質・問題行動等)と行動観察(食事場面における親子の関わり)を実施し,食事場面における親子関わりと親子の心身健康との関連について検証する(研究2)。コロナウイルス感染症の感染状況に応じて,対面調査が可能であれば,当初の計画通りに研究者による家庭訪問を行い,実際の家庭環境も含めて普段の食事場面における親子の関わり様子を観察し,研究1で開発された行動指標に基づいて親子関わりの質を評価する。コロナ感染状況によって,対面調査が困難な場合,研究1と同様に研究協力者自らの自宅撮影により食事場面における親子の関わり様子の動画データを収集する。研究3では,行動観察により得られた親子の行動指標および質問紙調査により取得した生活満足度やストレス得点といった具体的な量的指標を手がかりに,「気になる親子関係」や「援助が必要な家庭」への臨床的早期発見および早期支援を提供する。支援前後の効果を比較し,介入的支援モデルの有効性を向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて,計画した家庭訪問が一旦中止になった。その後,調査の実施方式を変更し,調査を再開したが,今年度は当初計画した調査数まで完成できず,予定した謝金および人件費が余った。中国現地への渡航および調査も計画通りに実施できなかったため,海外への旅費および調査費用も余った。研究全体の進捗が半年ほどずれているため,今年度に実施できなかった分は次年度に延期し,最終的に当初計画した調査数まで達成していく予定である。今年度の残額は次年度に繰り越して,延期した調査(家庭訪問および質問紙調査)に使用する予定である。翌年度分として請求した助成金は当初の計画通りに,翌年度の調査に使用する予定である。
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