研究課題/領域番号 |
20K14201
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
孫 怡 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 助教 (10794688)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 親子関わり / 食事場面 / 日中比較 / 行動指標 |
研究実績の概要 |
これまで日本と中国の都市部で収集した食事動画データを用いて、食事場面における親子関わり評価指標「Mealtime Interaction Rating Scale、 MIRS」(日本語版と中国語版)の初期開発が終わり、指標項目の構成を完成させた。中国版の開発にあたって、中国へ渡航し、復旦大学公衆衛生学と上海師範大学学前教育学の研究チームと研究会を開き、構成内容の妥当性について検討した。現在、デルファイ法を用いて、日本と中国の専門家の意見を聞き取り、指標の修正および妥当性と信頼性を検証している。また、1~3歳児それぞれ年齢別で指標の有効性も確認中である。 食事場面における親子の関わりと親子の心身健康との関連について検討するため、今年度は、日本と中国において1~3歳の母子を対象に、質問紙調査(家庭基本情報、母親の性格特性・食事に対する認知・食育ストレス・生活満足度、幼児の気質・問題行動等)と行動観察(食事場面における親子の関わり様子)を実施している。2024年4月末時点で、日本では関西エリア在住の母親128名が本研究への参加登録をしている。そのうち、91名がWEBアンケートに回答済み、親子27組が行動観察に参加した。中国では、上海市在住の母親694名がWEBアンケートに回答済み、35組の親子が行動観察に参加した。 これまで得られたデータを分析し、一部の結果を日本子ども学会第19回学術集会にて発表した(幼児の食事の自立性に着目し、中国都市部における共同育児の質が幼児の発達に及ぼす影響について)。他の研究者から得られた意見と助言を踏まえ、研究成果を論文にまとめ、学会誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は当初2020年からスタートし3年間で完成する計画であったが、最初の2年間ではコロナ禍の影響により進捗が遅れたため、現在研究全体を延期している状況である。 今年度、日本で実施した「幼児の食事行動に関する調査」(質問紙調査および行動観察)は、以下2つのルートで協力者を募集した。最初は関西エリアにある保育園(4園)と子ども園(1園)に依頼し、在園児の保護者に募集チラシを配布してもらった。しかし、応募者が目標数まで達成できなかったため、その後大阪府茨木市の子育て支援課に依頼し、乳幼児健康診査の際に茨木市立こども支援センターに来所した母親を対象に、協力者募集チラシを配布してもらった。現在、月に30名ほどの新規登録者が安定して増えているが、調査協力者の募集期間が予定より長かった。 中国では、上海にある早期教育機構(5か所)と幼稚園(11園、1~2歳児を対象とする託児部がある園)に依頼し、在園児の母親に募集をかけた。現在、調査目標数には達成したものの、そのうち1歳児と2歳児の対象者が少なかったため、1~2歳児をもつ母親を募集し続けている。4月末時点で、日本では母親91名が質問紙調査に回答し、親子27組が行動観察に参加した。中国では、母親694名が質問紙調査に回答し、35組の親子が行動観察に参加した状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はコロナ禍の影響により、全体が遅れているものの、コロナ禍収束後は、日中両国とも順調に進んでいる。ただし、現段階で当初計画した行動指標の開発(研究1)および質問紙調査(研究2:親子関わりと親子の心身健康との関連)は遂行できたものの、研究成果の応用(研究3:食事問題に対する有効な行動対処法の開発と育児支援の提供)がまだ実現できていない状況である。計画通りに本研究を完成させるため、さらに1年間を延長することにした。今後は以下のように進めていく予定である。 「幼児の食事行動に関する調査」の実施にあたって、中国では目標サンプル数を達成したが、日本のサンプル数はまだ目標に達成していないため、引き続き大阪府茨木市の子育て支援課と連携し、乳幼児健康診査の際に1~3歳児を持つ母親に募集していく。両国とも質問紙調査の有効回答数を300以上と計画している。 一方、本研究との関連性が高い専門家を招き、実証研究で得られた結果に基づいて、食事問題に対する有効な行動対処法を開発し、困っている親子を対象に育児支援を提供する。支援的介入の効果も検証しつつ、本研究の成果を学術界だけでなく、一般社会にも発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度から日本で実施している研究2(質問紙調査)では、必要なサンプル数にまだ達していないため、調査費用が余った。計画したサンプル数を達成するため、次年度に引き続き研究協力者を募集し、質問紙調査の回答者を増やしていく。 研究2が未完成のため、研究3(行動対処法の開発と育児支援の提供)の実装も遅れており、その分の予算も残っているため、次年度使用が生じた。よって、今年度の残額は次年度に繰り越して、継続している調査の謝礼や人件費、介入支援などに使用する予定である。
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