研究成果の概要 |
パラメーター付き跡公式を用いることによって, 対称べきL関数の族の零点分布にL関数の特殊値の重みをつけた量に関する新たな現象を発見した. その現象とは, 重み因子がL関数の中心値のときに限り, 重み付き零点分布が重み無しの零点分布から変化するというものである. これをもとに, 一般のL関数の族に対して重み付き零点分布に関する予想を立てた. さらにDirichlet L関数の族に対して予想を確認した(九州大学のAde Irma Suriajaya氏と共同). 以前に成果をあげたHecke固有値の代数的整数性およびHecke体への応用を論文として完成させた(信州大学の佐久川憲児氏と共同).
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では, L関数の零点分布はランダム行列の固有値分布と同じであろうというKatz-Sarnakの予想の重み付き版を考察した. L関数の特殊値による重み付き零点分布を考察することで, L関数の中心値の特異性を見出す契機となった. 従来のL関数の零点分布は, 重み付き零点分布であっても密度関数がランダム行列理論に出てくる5種類のいずれかに集約されていた. しかし本研究ではその5種類とは異なる密度関数を2種類発見した. またHecke固有値の代数的整数性は一般のHilbert保型形式と一般のSiegel保型形式の場合を扱っているため, 論文が完成し皆が閲覧できる状態になったことには意義がある.
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