研究課題/領域番号 |
20K14328
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
川本 昌紀 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (40770631)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スペクトル・散乱理論 / 非線形散乱 / シュレーディンガー方程式 / 磁場 |
研究実績の概要 |
2020年度には申請者は5本の論文が掲載され2本の論文が掲載予定である。また3本のプレプリントを作成し、1本の論文を作成中である。 まず、長距離散乱を行うために東京理科大学の石田敦英氏と共に時間減衰磁場において、その長距離と短距離の境目の推定を行い成功した。この論文は磁場が決定指数より少ない場合に Rep. Math. Phys. に決定指数の場合に J. Math. Anal. Appl. に掲載された。決定指数より少ない場合には非線形散乱が考察可能であり、初期値問題を東京理科大学の村松亮氏と考察し証明した。この論文は J. Evo. Eqn. に掲載予定であり、時間減衰磁場においても非線形問題が考察できることを世に示した。また同様に終値問題も考察し証明した。この論文は J. math. Anal. Appl. に掲載予定である。この結果を投稿後、香川大学の宮崎隼人氏とより一般的な非線形項を持った場合の終値問題を考察しているおり、非線形解析の専門家との共同研究が実現しつつある。また決定指数の場合においても初期値問題は考察でき、論文としてまとめ投稿中である。両研究共に未開拓部分が多く今後の研究の発展が期待される。 また磁場中の線形散乱理論も現在進行中で、時間周期磁場における散乱理論をほぼ理想的な磁場の条件下で完成させた。この結果は既存の漸近完全性に加え、固有値の非存在という物理的に重要な未解決問題の解決を含んでおり、非常にインパクトのある研究と自負している。 一方で国際共同研究の礎となるフランスの研究者との共同研究であるが、新型コロナウィルスの影響で頓挫している。ボルドー大学のDimassi氏とPetkov氏とは昨年度に始めた研究をなんとか完成させ出版に至ったが、新しい研究への議論は保留となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の重要な点である、非線形への応用に関しては十分な研究結果が得られており、また共同研究も実現し、今後の発展も期待できる。また多体問題への整備としての閾値の決定、散乱理論の証明も非常に順調である。 一方で昨今のコロナウィルスの影響により、国際交流は絶望的であり、現在の研究のほとんどが日本の研究者との共同研究である。国際発表は全く行なっておらず、当初の目標には程遠い。また多体問題も出張が行えず、国内の研究者とさえまともに議論出来ておらず、研究はほぼ手付かずである。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの影響で頓挫している国際発表や共同研究、多体問題などは、コロナ収束後に重点的に行うことで進めている。現在は非常に研究がうまく進んでいる非線形問題において日本の非線形研究者と積極的に共同研究を行なっていく。また今年度の研究で明らかにした、時間減衰磁場の決定指数の問題も物理的に重要な問題である為、線形非線型に限らず未解決な部分を積極的に明らかにしていく。 一方でこの研究の過程で線形化KdV方程式に関して多くの重要な事実を突き止めた。今後はこれらの研究結果をさらに発展させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響によりほとんどの出張がなくなり、旅費の使用目的が無くなってしまった。またDimassi氏とPetkov氏を日本に2週間ほど招待する予定だったが、もちろんこれも不可能となり、多くの予算を使えなかった。 一方で、Dimassi氏、Petkov氏との共同研究は頓挫しているものの計画は中止になっておらず、コロナ収束後は来日して頂き共同研究を行う予定である。 また今年度や来年度以降に国内のみならず、国際研究集会などが開かれた場合に備え旅費を温存している。
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