研究実績の概要 |
本研究の目的は, 多変量モデルにおいて, 変数の次元数が標本数を超えた場合も含んでいる高次元大標本データに対して良い性質をもつ変数選択規準を構築することである. 特に, 変数の個数が標本数を超えても実行可能な変数増減法の下で, 真の変数を選択する確率が漸近的に1となる性質である一致性をもつ規準を構築する. 目的を達成するために, 多変量モデルの1つである多変量線形回帰モデルにおいて, 標本数は無限大だが説明変数だけでなく目的変数も標本数を超えて無限大としてよい漸近理論により一致性を評価する. 本年度の研究内容は以下の通りである. 多変量線形回帰モデルにおいて従来使用されている一般化情報量規準に注目した. 本年度ではまず, 従来の変数選択法の下で一致性をもつ規準が変数増減法の下でも一致性をもつかを調べるための取り掛かりとして, 変数の個数が標本数を超えない場合に高速に実行可能な変数選択法であるkick-one-out法の下で一般化情報量規準が一致性をもつための条件を調べた. 具体的には, 真の分布は多変量正規分布に従うとし, 標本数は無限大であるが, 目的変数と説明変数の個数の和は標本数を超えない下で無限大でもそうでなくてもよい漸近理論により一般化情報量規準が一致性をもつための罰則項の条件を導出した. さらに, 導出した条件を利用することで, 標本数さえ大きく目的変数と説明変数の個数の和が標本数未満であれば, 目的変数と説明変数が大きくてもkick-one-out法の下で真のモデルを選択する確率が高い変数選択規準を提案した. 上記の研究内容は, 国内学会・学術論文で発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では, 変数の個数が標本数を超えても実行可能な変数増減法の下で, 真の変数を選択する確率が漸近的に1となる性質である一致性をもつ規準を構築することを目的としている. しかし本年度では, 変数増減法の下で規準の性質を調べる前に, 従来使用されてきた変数増減法の1つであるkick-one-out法の下で規準の性質を調べた. 変数増減法と従来の方法の関係を調べるためには本年度の研究は必要になるが, 変数増減法の下で規準が一致性をもつための条件を導出していないことから「やや遅れている」という評価をした.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進歩状況を踏まえて, これまでに得られた研究成果と絡めつつ, 以下のように研究を進めていく. まず, 多変量線形回帰モデルにおいて, 標本数は無限大であり説明変数の個数は標本数を超えて無限大となる漸近理論を用いて変数増減法の下で一般化情報量規準が一致性をもつための条件の導出を試みる. さらに, 本年度提案したkick-one-out法の下で一致性をもつための条件との関連性についても調べる. その後, 上記の内容の段階的な拡張を目指す. 具体的には, まず, 標本数未満であるが目的変数も無限大としてよい漸近理論を用いて一般化情報量規準が一致性をもつための条件の導出を試みる. さらに, 次の段階として, 目的変数が標本数を超えても計算可能となるよう規準を修正し, 標本数は無限大だが説明変数だけでなく目的変数も標本数を超えて無限大としてよい漸近理論により一致性の評価に取り組む.
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