本研究では高密度金属ガラスの実現に向けて,セリウム系金属ガラスのマトリックス中に局所的に分布する第二の高密度ガラス凝集体に着目する.初年度にあたる2020年度は,三元系Ce-Ga-Cuと四元系Ce-Ga-Cu-Niについて,様々な組成のセリウム系金属ガラスを作成した.XRDその場測定と高分解能熱膨張計測により,結晶化挙動についても幾つかの知見を得ることができた.2年目にあたる2021年度は,示差走査熱量測定により,ガラスの局所構造が室温での長期間エージングにより緩和していることを示した.また,陽電子消滅寿命測定により,ガラスマトリックス中にセリウム結晶の単原子空孔よりもわずかに小さいvacancy-sized free volumeが高密度に分布していることが示された.最終年度にあたる2022年度は,これまで作成したセリウム系金属ガラスについて,同時係数ドップラー広がり(CDB)測定を推進した.CDB測定により,陽電子寿命測定により見出されたvacancy-sized free volumeの近傍がセリウムリッチであることがわかった.このことは,高密度ガラス状態がセリウムリッチ(高密度セリウムガラス状態)であることを示している.上記に加えて,ガラス状態を維持するために重要なファクターの一因として,結晶化挙動における不純物の影響について調べた.FeやCoをわずかに導入した四元系セリウム軽金属ガラスとしてCe-Al-Cu-FeやCe-Al-Cu-Coを作成した.幾つかの試料については,5ミリメートルサイズの良質なバルク材料を得ることができた.僅かに導入された不純物により,高密度セリウムガラス状態が消滅し,ナノボイドが新たに生成した.
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