研究課題/領域番号 |
20K14388
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
上西 慧理子 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任講師 (80726274)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子計算 / 量子アルゴリズム / 量子コンピュータ / 熱平衡化 / 一次元系 / ソリトン |
研究実績の概要 |
量子-古典のハイブリット最適化問題の一つの例である変分量子固有値計算法(VQE: variational quantum eigensolver)では、パラメータを少しずつ変化させてエネルギーなど損失関数が最小となる状態を探索する。VQEの最適化過程では、深刻な問題を与えることとして次の二点の問題点が指摘されている。一つ目は、局所解トラップ問題で、ノイズのない理想的な環境下であっても局所解に留まり続けることがある。二つ目は測定コスト問題で、量子回路上で平均エネルギー勾配を計算するためには非常に多くの測定回数が必要である。本年度は、量子計算機を使うという設定においてVQEの問題点である、局所解トラップ問題と測定コスト問題を緩和できる実例を示した。
量子ダイナミクスに関しては、量子ダークソリトンの構成法やダイナミクスの計算を行った。特に、二つの窪みを持ったソリトンである量子2ダークソリトンの構成法の解析を行った。古典系では、複数のソリトンが衝突しても振幅や位相速度が変わらない性質や、衝突すると位相、ソリトンの位置がずれる位相シフトが生じることが知られている。量子ダークソリトン同士の衝突(追い越し衝突)の場合はどのような性質を持つのかを調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子計算機を使うという設定において、局所解トラップ問題と測定コスト問題を緩和できる実例を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度計算したのはシンプルな系であるため、今後はより大きなシステムサイズの系でも局所解トラップ問題や測定コストの問題を緩和できることを示したい。 また、VQEの局所解のメカニズムと、熱平衡化過程における非定常状態の関連性を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張が出来なかったことや、物品の購入については納品期日が不透明であったため先送りしたことで、予算執行額に変更が生じた。
次年度の会議への出張や物品の購入に用いる。
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