研究成果の概要 |
水溶液は人工光合成や太陽光発電における理想系のひとつである. しかし, 水和環境下では, 溶媒和相互作用に由来した溶質分子の構造異性化および電子状態変化が励起エネルギー移行過程を複雑化させる. 当該研究課題の最終目標は, 時分割軟X線オージェ電子分光法を溶液試料に対して確立し, 光アンテナ分子のひとつである金属ポルフィリン多量体の励起エネルギー移行効率に対する水和環境の協働作用を解明することである. 当該研究期間においては, 水溶液試料を標的とした軟X線電子分光法におけるエネルギー分解能を大幅に向上した. また, 気相の有機分子に対して軟X線レーザーを用いた時分割計測実験を実施した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
水溶液試料に対する軟X線レーザーを用いた時分割オージェ電子分光法に不可欠な基幹技術が当該研究において確立された. すなわち, 液相状態を保ったまま溶液試料を真空実験槽導入する液体分子線技術, 溶液試料に対する軟X線光電子分光、軟X線レーザーを用いた時分割計測技術等である. これらの技術を組み合わせることで, 多様な溶液試料における溶質分子の過渡状態の観測が可能になると期待される. 以上より, 当該成果は多様な基礎研究分野を刺激すると期待される. さらに, 励起エネルギー移行過程に対する水和作用の寄与が明らかになれば, 多様な光エレクトロニクスデバイスの創出・性能向上を促すと期待される.
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