研究課題/領域番号 |
20K14485
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川出 健太郎 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (90749243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 標準模型 / トップクォーク / 荷電非対称度 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、LHC-ATLAS実験で取得した重心系エネルギー13 TeV陽子衝突のデータを用いたトップクォークの精密測定による標準模型の解明、およびそれを通じた新物理探索を目指している。 令和2年度は、研究目的のうちトップクォーク対の荷電非対称度およびトップクォーク質量測定に注力した。 トップクォーク対の荷電非対称度では、海外の協力研究者と協力しデータ解析を進めた。自身はダイレプトン終状態を用いた解析を担当し、主にComenius大(スロバキア)からなるグループはシングルレプトン終状態を担当した。定期的な議論のためにTV会議システムを導入し効率的な議論が可能となり研究を加速した。課題である系統誤差低減のために、特殊な解析手法としてFully Bayesian Unfolding法を導入した。この手法により誤差の大幅な低減のめどがつき、現在は並列して行ったそれぞれの解析結果を最終的に結合する段階にあり、本年度内の論文投稿を目指している。 トップクォークの質量測定においては系統誤差を削減する解析手法の開発を行った。系統誤差をパラメータとする最尤フィッティング手法の開発を行った。現状では想定した性能が出せていないため、従来の測定と同程度の誤差に留まった。次年度以降も引き続き開発を行う予定である。また、新たにGPUなどの計算機資源を導入して、機械学習を用いたトップクォークの識別や再構成手法の開発にも着手した。性能はおおむね既存の手法を多少上回るが、さらなる性能の向上を目指して次年度以降も研究を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究テーマの一つトップクォークのスピン相関測定に遅延が生じている。CERN研究所に渡航し海外の協力研究者と議論をしながら立ち上げる計画であったが社会情勢により渡航できず大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
社会情勢によっては成果が出つつあるトップクォーク対の荷電非対称度、およびトップクォーク質量測定の研究に注力するかの判断を行う。 前者ではすでに解析の最終局面に達しているため、早期の論文投稿を目指す。 後者では新規の解析手法の研究を行ったが、既存の解析手法と比較してよいパフォーマンスを達成できる見込みがあるため、引き続き開発を行い、より発展した研究へとつなげていけるように尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせや議論のためCERN研究所や国際会議に参加する計画であったが、Covid-19のため渡航できず、旅費に計上した予算の大半を使用することができなかった。次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて打ち合わせや国際学会・国内学会への参加のための旅費として使用する予定である
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