研究課題/領域番号 |
20K14485
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川出 健太郎 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (90749243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 標準模型 / 荷電非対称度 / トップクォーク / bタグ |
研究実績の概要 |
本研究計画では、LHC-ATLAS実験で2015~2018年にかけて取得した重心系エネルギー13 TeV陽子衝突のデータを用いたトップクォークの物理解析を行う。 令和4年度は、トップクォーク対荷電非対称度測定解析を2つの終状態に着目して行い完了させた。自身は、ダイレプトン終状態を用いた解析を担当し、主にComenius大(スロバキア)からなるグループはシングルレプトン終状態を担当した。両解析グループが得た結果をFully Bayesian Unfolding法を用いて結合し、系統誤差の劇的な低減を実現した。総荷電非対称度および微分荷電非対称度の測定を行い、最も感度の高い測定では4.7σの有意差で荷電非対称を確認することができた。また、微分荷電非対称度を高次の理論計算と比較し、よい一致を確認した。これらの結果を論文にまとめ、JHEP誌に論文投稿し、2023年3月に受理された。 令和4年度より、本研究に関連してb-jet同定手法の開発を開始した。トップクォーク事象の選別効率が崩壊生成物であるb-jetの同定(bタグと呼ぶ)に大きく依存しており、この改善がトップクォーク研究の精密化には必要であるからである。ParticleNetと呼ばれる、比較的新しい深層学習アルゴリズムを応用し、既存のbタグ手法と比べてよい性能を示すことを明らかにした。 昨年度までに本研究比で導入したGPUなどの計算機資源を有効活用することで研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年、3年度よりはCovid-19の影響は薄まったが、本研究目的でのCERN渡航ができず、研究の一部が次年度以降に持ち越しとなった。しかし、研究計画の最大の目標であった荷電非対称度測定の解析はリモート会議などを活用して実施し十分な感度を実現し、JHEP誌に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
発展となる研究としてbタグの研究にも着手し、現時点で悪くない性能を明らかにした。次年度以降ATLAS実験内部でレビューを通じて、新しい手法として提案をしていく予定である。 また、昨年度まで実施できていないトップクォークの質量測定も実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせや議論のためCERN研究所や国際会議に参加する計画であったが、Covid19のため渡航できず、旅費として計上した予算を使用しなかった。 令和5年度は通常通り渡航できる見通しであるので、予算を繰り越しし国際学会・国内学会への参加のための旅費として使用する予定である。
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