研究課題
Th-229mはTh-229原子核の第一励起状態であり,8 eV程度という極端に低い励起エネルギーを持つ.そのため、Thの電子状態によっては、γ線放出過程や内部転換過程よりも高次の壊変過程である電子架橋遷移(電子遷移を介したγ線放出過程)が観測される可能性がある。本研究では、2価や3価のTh-229mイオンと分子をイオントラップ中で反応させるという手法を用いることで、1価のTh-229mイオンや様々なTh-229m分子イオンを生成し、電子架橋遷移を初めて観測することを目指した。2022年度は、イオントラップ装置を製作し、これまでに開発したRFカーペットガスセル装置と四重極質量分離器の間に接続した。イオントラップ部には1 Pa程度までのガスを導入することができ、Th-229イオンの電子状態を変化させることができる。まず、U-233線源から引き出された3価のTh-229イオンを一定時間トラップした後、バンチ化されたイオンを検出器まで引き出す実験を実施し、1バンチ当たり300個程度のTh-229イオン(数個程度のTh-229mを含む)を引き出すことができた。さらに、検出器上で中性原子になったTh-229mから放出される内部転換電子を検出することにも成功した。一方、イオントラップ中に微量のCO2を導入することで、3価と2価のTh-229イオンが化学反応によって変化する様子を確認することにも成功した。今後は、様々な化学種のTh-229mイオンをイオントラップ中で作製し、トラップ時間とTh-229mの個数(検出されるTh-229mの内部転換電子の個数)の関係を調べることで、Th-229mの化学種と半減期の関係を明らかにする。内部転換でもγ線放出でも説明できない半減期を持つ化学種が見つかれば、それについて電子架橋遷移由来の光子を測定することで、電子架橋遷移の存在を実証することができる。
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