研究課題/領域番号 |
20K14550
|
研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
桑原 正輝 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (60827575)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 惑星コロナ / 大気散逸 / 紫外線 / 水素ライマンアルファ |
研究実績の概要 |
遠隔観測(リモートセンシング)により惑星大気の水素・重水素の密度・温度分布の時空間変動および同位体比(D/H比)を求め,大気進化を支配する物理過程を明らかにする.その手段として,本研究では水素・重水素の輝線を選択的に吸収可能なフィルター(吸収セル)を原子拡散接合法を用いて開発する. 今年度は本研究の核となる原子拡散接合法を用いた吸収セルの製作に向け,MgF2とAl合金製ICFフランジの仕様(面精度,平行度,面粗さ等)を決定した.その後,Al合金製ICFフランジを研磨加工し,仕様に則したMgF2ビューポート部品を製作した. 並行して吸収セルに使用するフィラメントの性能評価を実施した.吸収セルの水素ライマンアルファ線(121.6nm)に対する吸収率は,セル内で解離生成した水素原子の数に依存する.吸収セル内部での水素分子の解離効率はフィラメントの表面積に依存する.そのため,フィラメントの表面積を大きくすることで吸収セルの性能向上が見込める.本実験では,従来の線型のフィラメントに加え,表面積の大きいリボン型のフィラメントを新規に製作し,両者の性能を評価した.性能評価は国内の放射光施設で実施した.それぞれのフィラメントに対し,封入ガス圧力,フィラメント電力を同じ条件にした際の水素ライマンアルファ線に対する吸収率を評価した.その結果,従来の線型フィラメントに比べリボン型のもののほうが高い吸収率を有することを確認した.フィラメントの耐久性や吸収の安定性の評価は今後の課題である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Al合金製ICFフランジを加工しビューポート部品の製作はできたが,MgF2との原子拡散接合には至っていない.次年度に接合し吸収セルを製作し性能評価を行う.
|
今後の研究の推進方策 |
MgF2とAl合金製ビューポート部品を原子拡散接合し吸収セルを製作する.製作したセルに対し,水素ガスの密閉度およびフィラメントの耐久性の評価を行う.これらの結果から,原子拡散接合による吸収セルの実現可能性を評価する. 年度の後半にはフランス放射光施設SOLEILにある高波長分解能フーリエ変換分光計を用いて製作した吸収セルの性能評価を行う.封入ガス圧力やフィラメントに与える電力を変化させたときに得られる吸収プロファイルから吸収性能(光学的厚み,吸収線幅)を評価する. 並行して吸収セルを水素ガス雰囲気中で密封する機構を製作する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたMgF2とビューポート部品の原子拡散接合には至らなかった.そのため今年度の使用額が減り,次年度使用額が生じた.
|