水素吸収セルの製作方法を一新し耐久性の向上を目指すため,原子拡散接合によるMgF2ビューポートの試作を行った.試作したビューポートに対しリークテストを行った結果,接合面にヘリウムリークが生じた.今回の結果を受けて,フランジ材に用いるAl合金の再選定が必要となった.今回,汎用性を重視し従来真空フランジに用いられるAl合金をフランジ材に用いた.リークが生じた原因は,このフランジ材の表面粗さを鏡面研磨プロセスにより十分に小さくすることができなかったためと考えられる.今後,研磨剤との親和性が良い別のAl合金を選定しフランジ材の最適化を図る.また,ビューポートの製作と並行して,吸収セルの密閉機構を製作した.従来の製作方法では,MgF2とガラスセルを熱膨張係数の違うガラス材を用いて段シールで融着しているが,融着部に使用する粉末ガラスが熱に弱いため高温でベーキングできない.また,ガラスセル内の排気およびガス導入に用いる管が細いため,セル内を清浄にできず封入する水素ガスの純度を高くできない.これらの理由からウォーターサイクルによるタングステンフィラメントの劣化を抑えることができなかった.今回製作した密閉機構により,吸収セルを高温でベーキング処理し清浄にした後に水素雰囲気中で密閉することが可能となった.研究期間全体を通した成果として,ビューポートのリークの課題は残ったが,新型吸収セルの製作方法の確立に一歩近づいた.
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