本研究の成果は,生物が持つ,生体内でのエネルギー収支や恒常性を維持する機構の理解を助けるのみならず,環境変化に対する生物の応答(生存戦略,環境変化への適応や進化),ひいては,生物圏における物質の移動・エネルギー循環の,定量的な理解に貢献する。例えば,寒冷環境や季節変化に対抗する手段として脂質を保持する生物が「実際に利用した脂質の種類や量」を定量的に評価することが可能になる。また,生体内での反応のみならず,堆積物や水柱に残存するバイオマーカー(炭素数16,18などの飽和・不飽和脂肪酸)から,生物が「脂質を生産した当時の環境情報」にアクセスできるようになると期待される。
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