研究課題/領域番号 |
20K14897
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
石山 千代 國學院大學, 研究開発推進機構, 准教授 (30847984)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 京都市都心部小学校跡地活用審議会 / 行政需要と地元要望の擦り合せ / 小学校跡地活用計画 / プロポーザル / ホテル開発 / 覚書締結 / 三者協議会 / 京都市美観風致審議会 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍で新たな主体へのヒアリング調査の実施が困難な状況と昨年度までの成果をふまえ、小学校跡地の活用に関わる先進的な検討及び取組みを1993年以来継続していて、関連する審議会等の資料及び議事録の閲覧が可能な京都市の取組に着目した多面的な文献調査を実施し、以下の成果を得た。 1993年から2011年までの都心部小学校跡地活用審議会の議事録を分析した結果、京都市の事業として行政需要と地元要望とを擦り合せながら暫定活用も含めた丁寧な検討によって一定の活用成果をあげてきたが、都心周縁部を含めた廃校数の更なる増加と施設老朽化、厳しい財政状況から民間事業も活用の対象とする方針転換に至った経緯を整理した。なお、この方針転換の中で、「建物の歴史的・文化的価値への配慮」が改めて位置付けられたこと、「原則として、売却は行わない」ことが明示されたことは、注目に値する。 続いて、2011年以降事業者登録制度によるプロポーザルの対象となった学校跡地の整理を行い、特に、入洛観光客数の増加を背景として、民間によるホテル開発等を含む具体的なプロジェクトが動き出している5つの学校跡地活用計画の具体的内容等について、応募条件、協議会によって締結された覚書の内容、京都市美観風致審議会での事前協議や諮問時の資料や新聞記事をもとに分析した。その結果、応募条件や覚書の内容や計画のコンセプトとしては、本研究課題の4つの視点(①地域の中で学校が担ってきた役割の尊重②地域の課題や要望への対応③地域外主体の受入れ④敷地内に留まらぬ施策連携)全てへの言及が確認されたが、現地での実際の空間整備、利用状況とを照らし合わせてみると、従来からの基本的な視点である①地域の中で学校が担ってきた役割の尊重と②地域の課題や要望への対応については、評価が難しい活用となっている計画も見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19感染拡大のため、当初想定していた新たな主体へのヒアリング調査は実施できなかったが、昨年度の成果をふまえた早めの方針転換によって、コロナ禍の合間を縫って現地へ資料収集に通い、想定していた以上の情報収集・整理を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまでの2年間の成果を学術論文等として取り纏める(ただし、多少の追加調査が必要)。また、「地域外主体」を利用者・事業者として位置づけた海外の廃校活用の事例についても一定の整理を行うなど、幅広い事例収集・整理を行い、学校跡地計画の全体像と変遷を明らかにし、活用内容が現在まで持続している事例を抽出する。そして、中長期的なプロセス解明を行い、本研究課題の4つの視点(①地域の中で学校が担ってきた役割の尊重②地域の課題や要望への対応③地域外主体の受入れ④敷地内に留まらぬ施策連携)がいかに導出され、調整、統合されてきたかの分析を行う。あわせて、住民、関連事業者・団体、自治体、現在のユーザーを対象に実施を予定している質問紙調査の設計も進める。 ただし、COVID-19の最新状況及び対象地域が置かれている状況を踏まえ、安全かつ適切な方法を都度慎重に検討しながら推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各地への現地調査を予定していたため旅費を多めに確保していたが、コロナ禍をふまえた研究計画の変更によって京都市への資料収集のための旅費以外が執行できなかったため。加えて、アルバイト作業依頼を予定していた時期が、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発令と重なり、人件費・謝金の執行が行えず、次年度使用額が生じてしまった。 次年度は、感染拡大が落ち着いたタイミングで効率的かつ安全に現地調査及びアルバイトの依頼を行いたい。ただし、COVID-19の最新状況及び対象地域や各人が置かれている状況と意向を尊重する。
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備考 |
研究内容の一部を学生向けに紹介したホームページ( SCOOP OF まちづくり)
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