研究課題/領域番号 |
20K14898
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬塲 弘樹 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特定助教 (60869121)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 住宅政策 / マンション / 空室 / スマートメータ / スマートシティ / 空間統計 / 不動産 / 都市計画 |
研究実績の概要 |
本研究は、電力スマートメータを用いて電力消費量から空き家率を推定し、家賃をはじめとする住宅特性や周辺環境との関連を分析するものである。本年度の主な実績としては、電力消費量から推定した共同住宅の空室率について、周辺への影響も含めて家賃との相関分析を行い、その結果が学術論文として採択された。以下、共同住宅空室率と家賃との関連分析結果について述べる。 共同住宅における空室は住宅政策における重要な課題であり、特に、長期的に放置されている物件は効率的な市場メカニズムを阻害する可能性があり、その立地や特性の把握が望まれている。本研究では建物属性と地域環境属性を統制しながら、段階的な空室期間についてアパートの空室率が家賃に与える影響を分析し、その空間的外部性を考察した。データ収集に際して観察不能な空き家を測定するため、逐次データとして蓄積可能なスマートメータを利用し、期間も踏まえた空室率を算出した。分析の結果、アパートの家賃と建物の空室期間の間に有意な負の相関が存在することが分かった。特に、その相関は空室期間が長いほど負に大きくなった。また、空室率の空間的外部性を考慮すると、近隣の他の建物の空室率を取り込むことによる統計的有意性は見られなかった。さらに、分位値回帰の結果、下位10%のアパート賃料水準はすべての空室期間と負の相関を示したが、上位10%は空室と統計的に有意な相関を示さなかった。以上の知見は都市・住宅政策に応用することができる。例えば、空室期間に基づく累進的な空き家税の導入など、空き家物件の市場参入を促す施策も検討に値し、政策的な議論を活性化できると考えられる。 以上より、令和4年度の研究は計画通りに進捗しており、令和5年度では国内・国際会議での発表などを精力的に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究進捗として、これまでの分析結果を論文としてまとめ、学術論文として発表したり、国際会議への出席のために準備を行ったりが主であった。そのため、共同住宅空室率自体の大きな進展がある訳では無いが、本研究からの派生的な分析も多く行い、そのいくつかは学術論文として刊行した。一つ目は、行政が空き家推定を行う際に利用可能なデータに制約があるとき、どのようなデータセットであれば推定モデルの精度が担保されるかを議論したものである。これは、Transactions in GISという国際学術誌で発表している。二つ目は、時空間データが大量に存在する場合、どのように計算可能なモデルとしてその傾向を推定するのかを検討し、モデル構築したものである。これは、International Journal of Geographical Information Scienceという国際学術誌で発表している。三つ目は、日本とスペインの空き家の政策や税制を比較し、行政サイドからどのように空き家をコントロールするかを論じたものである。これは、Urban and Regional Planning Reviewという国際学術誌で発表している。以上より、研究成果は順調に出ており、令和5年度以降は国際会議での発表に注力する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、共同住宅の空室率に関する分析は主に国内・国際会議での発表や、追加分析のまとめを行って論文執筆を行うような流れを予定している。さらに、これまでの研究成果を発展させるため、共同住宅のデータに対してスマートメータだけでなく不動産登記やBIMのデータなども結合させることを検討している。これにより、より詳細なデータ分析が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに国内および国際会議で発表を行うための旅費を計上していた分が、新型コロナウイルス感染拡大のために予定よりも回数が少なくなってしまった。そのため、次年度では旅費を中心的に使用する予定である。また、引き続き成果発表のため、論文執筆に向けた英文校正や論文投稿料や掲載料にも充当する予定である。
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