研究課題/領域番号 |
20K14901
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関口 達也 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (90758369)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 買い物弱者 / 不便 / アクセシビリティ / 道路環境 / アンケート調査 / 歩行速度 |
研究実績の概要 |
2021年度はまず、既存研究の整理とともに論点の絞りこみや対象地域の選定を行った。既存研究のレビューより、これまでに買い物弱者関連の研究において、店舗までの距離以外の要素の影響を考慮して、人々の買い物時の不便という、重要な概念の構造解明に焦点を当てた研究は少ない事が明らかになった。 また、高齢者の歩行しやすさに対して、詳細な道路環境要素がその評価に及ぼす影響を考慮した研究は複数あるものの、対象地域や対象者が限定的という課題が見られた。また、静的な道路環境への評価が中心で、動的な道路環境要素に着目した研究は殆どなかった。 その結果を踏まえ、今年度は、東京都の徒歩により買い物を行う人々を対象に、アンケート調査を行い、買い物環境の不便という概念の評価構造の把握を行った。利用する店舗のアクセス性への評価が、店舗の商品質・サービスへの評価と同等以上に重要である事がわかった。さらに、この店舗のアクセス性に着目し、そのアンケート評価の解析から、距離を含む道路環境要素のうちいかなる要素への評価が問題に繋がっているかの分析を行った。人々の各要素への許容度、道中の存在量などを考慮した点が特徴であり、国際シンポジウムで途中経過を発表した。現在、学術論文としての投稿を視野に分析を継続中である。 さらに、道路上の環境や沿道の建築要素が、歩行速度に与える影響の把握を行った。動画像から人々の歩行速度と道路環境や沿道の建築要素の分布を推定する簡便な方法を提案し、実証分析から歩行速度の増減に影響を与える要素を抽出する事ができた。一連の方法提案と分析結果は、学術論文としてまとめた。また、移動販売は買い物弱者対策の一つである。その利用地点と最寄り店舗までに存在するアクセス性の不便に繋がる道路環境要素は、買い物不便に関係する要素と考え、経路上に多く存在する要素を把握した。その結果を一部に含む論文が国際誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の分析は、概ね初年度に行うべき項目として計画していたが、それらを遂行でき、学術的な場で発表をして、一定の成果として公表できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を審査付き論文として投稿・掲載を目指す。また、アンケートでアクセス不便の評価に影響する項目を抽出する事は出来たが、今回の調査は経路全体を通しての主観的評価に基づくものである。また、実際にどの程度存在していると不便に繋がるのかまでは把握できていない。今回得られた分析結果や、そのような研究課題が残っていることを踏まえて、研究を続けていく。具体的には、人々の評価面についても客観的かつ任意地点で評価可能な動的な指標を用いて、経路上の任意区間における各要素の存在量とそれらの動的な評価指標の関係を記述するための分析に着手していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会参加のための旅費がかからなかった事が主な理由である。
|