研究課題/領域番号 |
20K14901
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
関口 達也 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90758369)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 買い物弱者 / アクセシビリティ / 主観的評価 / 客観的状況 / 許容度 / 存在量 |
研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度に引き続きコロナ禍により同条件多人数での被験者実験の目途は立たなかったため、買い物環境の不便という概念の評価構造の把握を行った昨年度の調査の分析を深めた。 具体的には、昨年度に実施した、東京都に居住する普段から徒歩で買い物を行う人々1000人を対象としてウェブアンケートから収集した、各自が日常利用する店舗へのアクセス性の評価、さらに店舗アクセスの不便に関わりうる道路環境要因の利用許容度や実際の不満度などの調査データを用いて解析を行った。 分析では、1) アクセス面の不便がいかなる道路環境要素に対する不満により生じるのかを明らかにするとともに、2) 各道路環境要素に対して不満が生じやすい条件を明らかにする事とした。各人の各要素の利用を許容できるか避けたいかの度合いを示す「許容度」と買い物経路上の各要素の「存在量」についての主観的評価指標を導入し、分析を行った。 各要素に対する不満率は、人々の許容度や各道路要素の存在量と密接に関係しており、特に動的な道路環境要素として設定した「夏に歩きにくい」、「悪天候時に歩きにくい」は、高齢者が抱える不満の上位に位置していた。また高齢者を中心に距離への不満を避けようとする中で、他の道路環境要素を避けきれず不満につながる事や、いくつかの道路環境要素は、特定の属性・状況下にある高齢者が有意に避けたがる傾向があり、各要素ごとに避けたがる人々の特性・属性を把握した。 さらに、買い物弱者の問題の根底にある「アクセス性の不便」に有意に関わる各道路環境要素を抽出し、それらについて、GIS等を用いて各回答者が買い物に利用するルートを推定、そのルート上の注目すべき要素の客観的存在量を推定した。それらのデータを基に、個人特性も加味した分析を行い、各要素への満足度評価の傾向が大きく変わりやすい道路環境要素の客観的存在量を特定できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度はコロナ禍により被験者実験の目途は立たなかったが、その代わりに、買い物時の店舗のアクセスに関する移動の抵抗要素が実際に経路上にどの程度存在していると不便に繋がるのか、という研究上の問いに対する回答を得られた。この知見は、一般的に各地域で調査に手間や費用がかかりやすい人々の主観的評価を、地域の道路環境に関する客観的状況のデータから簡便に推定をする事に繋がる。アンケート調査等の主観的評価と実地域における客観的環境を繋ぐ重要な知見が得られたと考えられ、それらの全体を踏まえて、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、今年度の研究成果を査読付き学術論文にまとめ、投稿し、知見の公表を目指す。また、被験者実験によるデータ収集・分析はコロナ禍の様子を見ながら実施検討を続けていく。一方で、被験者実験を伴わない形での分析方法を模索するなどについても検討し、時間的に動的・静的な道路周辺の環境要素が買い物時の移動の不便・不満に及ぼす影響についてより深く検討していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、参加した学会・研究会等の学術集会がオンラインで開催されたため、旅費が発生しなかった事、昨年度に収集したデータを用いて分析を深化させたことなどが、主な理由である。次年度は、被験者実験の実施、もしくは代替的な調査・解析方法によるデータ収集・解析を中心に経費を執行していく計画である。
|