窒化物を母体材料とした窒化物系蛍光体は高輝度かつ温度消光の少ない優れた蛍光体である.本研究は,GPa以上の超高圧力を反応場として利用した新奇窒化物の合成と窒化物系蛍光体の創製を目指した研究を実施した.初年度はCa3N2:Si3N4が5:2の原料組成において窒化物のアモルファス相を合成することに成功し,希土類元素Euの賦活により2価の発光を示すことを明らかにした.本年度は合成に成功した窒化物アモルファス相の合成条件の検討および詳細な構造と発光特性の評価を行った.合成条件については,Ca3N2:Si3N4=1:1の組成や低い合成温度(1300 °C)条件では結晶相Ca16Si17N34が生成したことから,Ca3N2に富む組成かつ1400 °C以上の高温条件がアモルファス相の生成に必要であることが示された.また,一般的な酸化物ガラスと同様に,溶融状態から急冷することで生成したガラス相であると推察される.XAFS測定によるEXAFS振動からEu-N距離がおよそ2.5 Åであり,一般的なCa(Eu)-N距離と整合する.ガラス相Ca5Si2N6:Eu2+は近紫外線励起によって広帯域な黄色発光を示し,α型Ca5Si2N6:Eu2+の発光(赤色発光)よりも短波長側へ励起発光がシフトした.以上より,高圧アモルファス相は常圧結晶相(α型およびβ型)とは異なる配位構造を有していることが示された.この他,酸化物などの窒化物以外の物質系においても,ガラス相を含む高圧相蛍光体の合成を試み,結晶相ではあるがアルミン酸カルシウム系高圧相において,数種の新規Eu賦活蛍光体の合成に成功した.したがって,高圧力反応場を利用した新規蛍光体のさらなる発見の可能性が示された.
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