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2020 年度 実施状況報告書

光電子イメージングによる高配向有機半導体分子薄膜の構造と電子状態の理解と制御

研究課題

研究課題/領域番号 20K15176
研究機関分子科学研究所

研究代表者

長谷川 友里  分子科学研究所, 光分子科学研究領域, IMSフェロー (60829464)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード配向分子膜 / 光電子運動量顕微鏡
研究実績の概要

本研究は配向性有機半導体分子膜を対象とする.有機薄膜では,単結晶とは異なる構造が形成され,分子間および分子基板間の相互作用が膜全体の電子状態を左右することが知られている.近年,光電子分光法の計測技術および理論計算の分野において飛躍的な進展があり,広い波数空間において従来よりも迅速に電子状態を調べることが可能になり,また,従来得ることの困難であった光電子パターンから,電子状態の新たな解釈が可能になりつつある.ただし,波数空間においても情報を得るには通常の光電子分光法やプローブ顕微鏡における計測とは異なる試料作製の指針が求められる.すなわち,分子配向が広く均一であり,多ドメインの抑制された試料が必要となる.一方, van der Waals力を主とする弱い相互作用からなる分子薄膜の構造制御の指針は十分に得られていない.本研究は,分子間の相互作用や基板表面の原子配列等が分子の配向に及ぼす影響に着目し,高配向分子膜の成長機構を明らかにし,高配向分子膜とその光電子パターンの取得による電子状態の解明を目指す. 2020年度は分子科学研究所UVSORに導入された放射光光電子運動量顕微鏡(PMM)を利用した配向性分子膜の角度分解光電子分光計測を試み,また当該装置を利用したいくつかの共同研究においても試料作製や計測が可能な環境の整備に努めた.実際に計測を実行し,得られた成果について直近に開催されたUVSOR Synposium2020において発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は,新規光電子運動量顕微鏡計測に有用な薄膜の作製および計測の2つを軸とする.2020年度は,計測に関する課題に注力し,放射光PMMにおいてより良好に配向性分子膜を計測し得る条件を得た.試料作製のための表面清浄化や成膜条件の方針を得た.共同研究においても,基板の清浄化,成膜や計測において同様の手法を用いることで,配向性分子薄膜の作製と電子状態計測が可能であることを示せた.このように計測環境の構築に注力するため,研究対象には分子骨格と基板の対称性のシンプルな系を対象とした.このため,配向薄膜の成長過程の評価については十分に進められておらず,進捗状況はやや遅れていると判断した.

今後の研究の推進方策

2021年度は,配向分子膜の成長条件の評価や構造制御の研究課題に着手する.申請者は2021年度に所属が変更になり,超高真空走査トンネル顕微鏡(UHV-STM)および放射光施設SRセンターにおける角度分解光電子分光やX線吸分光法についても,新たに利用できる環境を得た.配向性分子膜の成長機構の課題を積極的に進めるため,特にUHV-STM装置において,基板清浄化および蒸着機構の構築,STM計測やデータ解析の環境の構築を重点的に進めていく.配向分子膜の成長過程において,分子間および分子基板間の相互作用を利用する.特に後者については原子レベルでのテンプレート構造となり得る微斜面基板を想定しており,基板表面構造を得るところから実験に取り組む.得られた表面において成長させた配向性分子膜について,SRセンターにおいて電子状態を調べる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Experimental Observation of Anisotropic Valence Band Dispersion in Dinaphtho[2,3-b:2′,3′-f]thieno[3,2-b]thiophene (DNTT) Single Crystals2021

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Riku、Izawa Seiichiro、Hasegawa Yuri、Tsuruta Ryohei、Yamaguchi Takuma、Meissner Matthias、Ideta Shin-ichiro、Tanaka Kiyohisa、Kera Satoshi、Hiramoto Masahiro、Nakayama Yasuo
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry C

      巻: 125 ページ: 2938~2943

    • DOI

      10.1021/acs.jpcc.0c09239

  • [学会発表] STM / ARPES / DFTによる環状分子クラウンエーテル分子膜における3d遷移金属吸着の研究2021

    • 著者名/発表者名
      根本 諒平、クリューガー ピーター、細貝 拓也、堀江 正樹、長谷川 友里、解良 聡、山田 豊和
    • 学会等名
      第68回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] STM / UPSによるCu(111)表面へのフェロセン アンモニウム吸着の研究2021

    • 著者名/発表者名
      西野 史、根本 諒平、後藤 悠斗、王 祺嫻、堀江 正樹、細貝 拓也、長谷川 友里、解良 聡、山田 豊和
    • 学会等名
      第68回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Dph-BTBTの伝導におけるHOMO-1の影響2021

    • 著者名/発表者名
      岩澤 柾人、長谷川 友里、野崎 美沙、栗原 俊平、大瀧 峻也、二木 かおり、石井 宏幸、佐々木 正洋、松井 文彦、解良 聡、山田 洋一
    • 学会等名
      第68回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 光電子運動量顕微鏡を用いた配向分子薄膜の光電子分光2020

    • 著者名/発表者名
      長谷川友里,松井文彦,解良聡
    • 学会等名
      UVSOR Synposium2020

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公開日: 2021-12-27  

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