研究課題/領域番号 |
20K15205
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺林 稜平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10870272)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | レーザー分光 / 同位体分析 / 光周波数コム / 光共振器 / キャビティリングダウン分光 / 放射性核種 |
研究実績の概要 |
長半減期放射性核種を分子種ごとに定量分析可能な分析法として、中赤外光周波数コムと高反射率光共振器を利用した高感度レーザー吸収分光法の開発を行う。研究計画の2年目である令和3年度の研究実績を以下に示す。 (1)V字型光共振器光フィードバック法を用いた中赤外半導体レーザーの狭線幅化: 中赤外光周波数コムを周波数参照とした高感度キャビティリングダウン分光を実現するためには、プローブ光源として利用する中赤外半導体レーザーの狭線幅化が不可欠であった。そこで、V字型光共振器を利用した光フィードバック法によるレーザー安定化手法の開発を行った。結果として、100 kHz以下のレーザー線幅を達成し、同時に共振器長を掃引することにより、モードホップフリーで10 GHz近い周波数掃引を可能とした。本成果は現在論文投稿を準備中である。 (2)中赤外光周波数コム-光フィードバック半導体レーザー-光ヘテロダイン干渉法によるレーザー周波数安定化法を開発: 昨年度構築した光ヘテロダイン干渉法による周波数モニタリング体系をベースとして、ビート信号の周波数を一定に保つようにV字型光共振器長にフィードバックする安定化手法の開発を行った。これにより、モードホップフリー掃引範囲(~10 GHz)の範囲で、ビート信号周波数のセットポイントを段階的に変調することにより光周波数コムの安定性・周波数確度をプローブレーザー周波数に持たせることができるようになった。 (3)光周波数コムを利用したキャビティリングダウン分光による複数分子種の吸収スペクトル同時取得: 本研究の最終目標である、複数分子種吸収スペクトルの同時取得に向け、(1)(2)の成果をもとに、最終年度(令和4年度)の実験に向けた準備を行った。具体的には、吸収スペクトル計算に基づき、周波数掃引範囲・ターゲット分子種の決定を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は所属機関の変更を伴い、特に光周波数コムの利用について期間変更以前より実験実施が制限されたものの、研究協力者との効率的な連携により、進捗に大きな遅れはない。光周波数コムを直接プローブレーザー光として使用する試みに対し、光周波数コムをプローブレーザー光の周波数参照として利用する手法について並行して研究に取り組み、今年度本研究の最終目標である複数分子種の分析実証が可能な見込みが得られたため、おおむね順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度、光周波数コムをプローブレーザー光の周波数参照として利用する手法により複数分子種の分析実証が可能な見込みが得られたため、最終年度は当初の計画通り、本手法を用いた複数分子種の分析実証に取り組む。また、得られた成果を論文にまとめ、論文誌に投稿するとともに、学会発表にて報告する。今年度、所属機関変更を伴い、実験については引き続き元所属機関の研究協力者と連携し効率的に実施する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の所属機関変更に加え、新型コロナウィルス感染拡大に伴う移動自粛が重なり、予定していた実験のための出張が実施できないなど、実験装置利用や実験実施に一部制限があり次年度使用額が生じた。ただし、オンラインツールを活用し、研究協力者との効率的な連携を図ったこともあり研究計画そのものに大きな遅れはない。次年度は最終年度として最終目標である複数分子種の分析実証実験に取り組む。このために必要な光学素子等の消耗品費・少額備品費、および出張旅費として助成金を使用する計画である。また得られた成果を取りまとめる。
|