研究実績の概要 |
本研究は、再生可能エネルギーを利用したエネルギー変換技術の一つである半導体光触媒を用いた太陽光水素製造を発展させ、水素製造と同時に、酸化反応で高付加価値な化学品を合成する系の構築を目的としている。具体的には、異種金属種をドープすることで可視光応答化が実現可能なSrTiO3系光触媒に着目し、バンドギャップ内にドープ金属で形成される新たな準位により酸化力を制御することで、可視光照射下における選択的な酸化反応の実現を目指している。本研究の初年度となる令和2年度は、ベンジルアルコールおよびベンジルアミンを基質として用いた酸化反応をプロトタイプとし、種々の金属種をドーピングしたSrTiO3(SrTiO3:M)を用いた光酸化反応について、(1)種々のSrTiO3:Mの光酸化反応能の有無、および、ドープする金属元素種が反応選択性や活性へ与える影響、(2) 光触媒作製条件や各種反応条件が反応速度に与える影響について検証した。 (1)については、8種類の金属種(Rh, Ru, Ir, Cr, Mn, Fe, Ni, Cu)をドーピングしたSrTiO3を用いた光酸化反応を検討し、SrTiO3に対してRhをドープした光触媒(SrTiO3:Rh)が最も高い光酸化活性を示すことを明らかにした。また、(2)については、用いるSrTiO3:Rh粉末において、助触媒種類や担持量、Rhのドープ量、SrTiO3:Rhの合成条件(合成法、焼成温度や時間)が光酸化反応活性に与える影響を検証した。特に担持する助触媒種類が光酸化活性に大きく影響を与え、水溶液中での反応においてはRuを、アセトニトリル中での反応においてはPdを担持した場合に最も活性が高くなることを明らかにした。また、溶液法で作製した微粒子が、固相法で作製した粗大粒子に比べて2倍程度高い酸化活性を示すことも明らかにした。
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